【あらすじ】
ある日、高校生が左手から青い炎を出して人を殺すところを見てしまった桜小路桜(さくらこうじ・さくら)。正義感の強い彼女は、「存在しない者(コードブレイカー)」である彼、大神零(おおがみ・れい)に殺人を辞めさせようと悪戦苦闘する。大神は桜に自分の「異能」が効かないことに気づき、監視することに。実は桜は「珍種」と呼ばれる存在だった──。やがて、他のコードブレイカーたちの存在も明らかになり、彼らが何故悪人を殺しているのかを知るようになる桜。それでも殺してはいけない──その強い思いだけが彼女に必死に殺人を止めさせる。桜は何故そこまで殺人を拒むのか?そしてコードブレイカーたちは何故そうまでして戦うのか?これはそれぞれのキャラクターの成長物語でもある。
【みどころ】
まず、桜と大神のクラスメイト一人を取っても、モブキャラがいないのがいい。やがて戦いに巻き込まれることになるクラスメイトたちも、友情という名の元に心を一つにする。2012年にアニメ化された際にも、クラスメイトの詳細まで練られたというほどだ。
元CODE:01の人見との対決、「捜シ者」とRe:CODEとの闘い、「天使」と呼ばれる珍種たちとの激闘……バトルシーンは本当に見応えがあり、音や光などの表現しにくい「異能」を見事に描き切っている。闘うたびに身体だけでなく、心も強くなっていく異能者たち。
官能小説を芸術としてこよなく愛する平家将臣(へいけ・まさおみ)、コンツェルンの社長なのに天然でにゃんまる大好きな天宝院遊騎(てんぽういん・ゆうき)、大神の最大のライバルで姉の寧々音を想う刻(トキ)、家事全般得意でウイスキーとバイクを愛する王子こと八王子泪(はちおうじ・るい)。彼らと時に対立しつつも、信じ合い、疑い合い、憎み合い、協力しながら敵を斃(たお)していく大神たちの姿には、時に涙する。
「異能」や「ロスト」など、魅力的な単語が飛び交う中、必殺技もカッコイイ。「煉獄の炎(サタン・ブレイズ)」や「闇色の辺獄烈火(ベルフェゴール)」など、七つの大罪を燃え散らす七つの炎を使う大神は、それぞれの悪魔を従えるために自分の大事なものを捧げていくが……最後に七魔を従える時に差し出した、一番大切なものとは一体?!
最終回は純粋にハッピーエンドとは言えないかも知れないが、大切な人を守り抜き、お互いの行く道を選んだ大神たちに拍手喝采。5年後を描いた番外編では、心穏やかなコードブレイカーたちを垣間見ることができる。
「善と悪」、「正義と偽善」、「信頼と裏切り」など、様々な要素が意味深に含まれているが、それだけでは語れない奥深い人間の業を描いている『CODE:BREAKER』は、少年誌掲載だが、女性にも愛される作品になっている。
【作品データ】
・作者:上条明峰
・出版社:講談社
・刊行状況:全26巻