2013年10月19日発売の「マーガレット」22号には、『ベルサイユのばら』(池田理代子)のコミックス第1巻復刻版の別冊付録がつきました。
この太っ腹さに敬意を表して、特別編として、 この復刻版『ベルサイユのばら』第1巻“新しい運命のうずの中に!の巻”レビューです。
【あらすじ】
18世紀。オーストラリアの女帝マリア・テレジアの第9子として生まれたマリー・アントワネットは、14歳でフランスの王太子のもとへ嫁ぐ。美しく無邪気だが誇り高いアントワネットは、ベルサイユ宮殿での新しい運命の中へ歩み出していく。
王家の軍隊を統率してきたジャルジェ家の娘、オスカルは生まれたときから、男子として育てられた。近衛連隊長付き大尉として、マリー・アントワネットを迎えるのだった。
スウェーデンの貴族、ハンス・アクセル・フォン・フェルゼンは欧米諸国での留学を経て、パリの社交界へやってくる。
アントワネット、オスカル、フェルゼン。彼らの宿命的な出会いとともに、ベルサイユ、そしてフランスは激動の時代を迎えようとしていた…
【みどころ】
日本の少女漫画界屈指の名作であり、もっとも華麗で誇り高い作品といっても過言ではないのがこの『ベルサイユのばら』。作品が連載されたのは、1972年~ですが、今現在読み返しても、その華やかさは色あせることがありません。
物語が始まるこの第1巻で、まず目をひくのは、アントワネットの美しさ、可憐さ。豊かな巻き毛にきらきら光る大きな瞳、フリルやレース、リボンをふんだんにまとった美しいドレス。 彼女の姿は、女の子が憧れる永遠の王女様です。しかし、美しく可憐なその姿の奥に、アントワネットは誇り高い精神を持ち、少女ながら好き勝手に振舞う娼婦に屈するのを拒みます。
そして、物語のもう一人のヒロイン、オスカルのりりしさも、第1巻から健在。軍服を身にまとって、馬を乗りこなし、剣をたくみにあやつるオスカル。そして、権力に屈することなく、自らの正義のもとに行動するオスカル。美しくりりしい私たちの永遠の憧れです。
そして、忘れてはならないこの作品のもう1つの魅力は、そのドラマチックなストーリー。物語は革命前のフランスから始まります。豪華絢爛なベルサイユ宮殿。連日のパーティ、浮かれ遊ぶ貴族たち。しかし、パリの街へ足を踏み込むと、そこに暮らすのは、その日のパンにも困る平民たち。当時のフランスでは、華やかさと貧しさが同時に存在していました。やがて、その均衡は崩れていきます。貧困に苦しむ平民たちの悲しみと怒りが、革命の幕を開いていくのです。
『ベルばら』は、この激動の時代の華やかさ、苦しさを非常にわかりやすく描いている作品でもあります。華やかなベルサイユ宮殿で浮かれる者。野心をもやし、権力にむらがる者。一方、パリの街では貧困に苦しみながら、貴族にすりよろうとする平民たち。革命へと向かうフランスの光と影を美しく劇的に描く物語には、ただただひきこまれずにはいられません。また、フランス革命という歴史的事件を知るための書籍としても、非常にわかりやすくまた読み応えのある作品です。
激動の時代に翻弄されながらも、誇り高く美しくベルサイユで生き抜くオスカルとアントワネット。ばらの宿命(さだめ)に生まれた彼女たちの華麗なるドラマ、第1巻ではまだ始まったばかりです。