GOSICK ─ゴシック─(ビーンズ文庫) (角川ビーンズ文庫)

未完の名作!コミック版『GOSICK』いいとこ取り!

GOSICK ─ゴシック─(ビーンズ文庫) (角川ビーンズ文庫) 【あらすじ】
1924年春の出来事。西欧の小国であるソヴュール学園に留学してきた久城一弥(くじょう・かずや)は、なかなかクラスに馴染めなかった。しかしある日突然殺人事件に巻き込まれ、犯人扱いされる。そんな中出会ったのは、上等なビスクドールのような少女、ヴィクトリカだった。一弥とヴィクトリカは喧嘩しながらも仲良くなり、様々な事件を解決していく。フリルのドレスと謎に満ちた、上等なゴシック・ミステリーのコミカライズだ。

【みどころ】
直木賞作家、桜庭一樹氏の未完の名作のコミカライズ作品。原作は、富士見ミステリー文庫が事実上の廃刊となったため、その後は角川文庫から新装版が出版されている。短編と長編があり、コミカライズは長編の4巻までのダイジェストだ。

図書館塔の一番上の階にいつもいる、退屈を持て余した美少女、ヴィクトリカとの出会いが印象的。同い年なのに背が小さく、なのに態度は生意気で、パイプをくゆらすヴィクトリカ。何冊もの難しい書物を同時に読み進める卓越した頭脳で、「混沌(カオス)を再構成してやろう」というキメ台詞とともに謎を解決していく、動かない探偵だ。

そんなヴィクトリカの義兄は、趣味で刑事をしているという、変な髪形のブロワ警部。妹とは折り合いが悪いらしく、いつも一弥を間に挟んでしか会話をしないのがおかしい。一弥とヴィクトリカが巻き込まれる事件には必ず関わってくるのはお約束だ。

しかし物語は「幽霊船クイーン・ベリー号事件」を経て、大詰めを迎える。「灰色狼」の末裔と呼ばれるヴィクトリカを誰かが誘い出す広告を掲載し、偶然それを見たヴィクトリカは、なんと自ら罠に出向いてしまうのだった。原作でいう「愚者を代弁せよ編」で、コミカライズは完結しているが、最終巻ラストの読切、一弥とヴィクトリカの出会いの前触れを描いた短編には心温まる。

おいしいところや気になる全体的な伏線は原作を読まないとわからない部分もあるが、コミカライズでも十分楽しめる謎解きミステリーだ。ヴィクトリカのフリヒラのドレスは毎回愛らしく、ゴシック好きにもたまらないだろう。古代ロマンを彷彿させる第二次大戦前という背景も美しく、天乃咲哉先生の描くキャラクターには愛情たっぷりで、読み応えも十分である。ぜひおすすめしたい。

【作品データ】
・作者:原作/桜庭一樹 作画/天乃咲哉 キャラクター原案/武田日向
・出版社:富士見書房
・刊行状況:全8巻

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