いつからだろうか。大阪の街を歩きふと居酒屋に入ると、ドリンク欄にワインの3文字が目につく機会が増えた。『神の雫』(モーニングにて連載中)が、そんなワインブームの火付け役に一役を買ったことは間違いない。
当作は、原作:亜樹直、作画:オキモト・シュウが送り出す、ワインを中心に物語が展開されるグルメ漫画。世界的なワイン評論家である神咲豊多香の息子(神咲雫)が、父の死後「発言が市場に影響を及ぼす」とまで評価を受けていた12本の偉大なワイン「十二使徒」と、その頂点に立つ「神の雫」と呼ばれる幻の1本を探しながら、成長していく模様が描かれている。グルメ漫画にありがちな知識先行の記述が少なく、ワイン初心者でも読みやすい教科書としての側面も併せ持つ。
2009年に日本テレビよりドラマ化され、国内で注目を集めたが、実は世界的な評価も高い。ワイン大国フランスでは、グルマン世界料理本大賞の最高位の賞「殿堂」を日本の作品として初めて受賞し、韓国では累計200万部を記録。ワインの知名度の向上に貢献している。また、ネット通販では当作に取り上げられたワインの価格が高騰し、出荷を停止する事態に発展するほど、業界に与える影響も大きい。
近年「クール・ジャパン」を謳い文句に、日本のアニメ・漫画などのカルチャーが世界から注目を集めているが、「ワイン」という異国発祥の文化を紹介し、フランスのワイン専門誌「ラ・ルビュー・ド・バン・ド・フランス」で最高賞を受賞した当作の快挙は、今後の日本文化の発信の手法に、新しい可能性を切り開いた。ワイン市場に影響を及ぼす“日本発のワイン漫画”。今後の『神の雫』の動向から目が離せない。
【作品データ】
原作:亜樹直 作画:オキモト・シュウ
出版社:講談社
既刊状況:38巻(続巻)