来年でなんと第1作目から35周年を迎える名門ロボットアニメ『ガンダム』シリーズ。その最新作『ガンダムビルドファイターズ』がいよいよ10月から放送スタートする。公式サイトはこちら。
そこでビルドファイターズ開始に合わせ、予習のため読んでおきたい・見ておきたいガンダム漫画とアニメを紹介したい。前編となる今回は1982年から連載された不朽の名作『プラモ狂四郎』だ。
主人公の京田四郎はロボットアニメに出てくるプラモデル――とりわけガンプラ(ガンダムのプラモ)が大好きな小学生で、そのフルネームをもじって周囲からは“プラモ狂四郎”と呼ばれている。現代でいうところのオタクの先駆けだ。彼がいきつけのプラモ店には「プラモシミュレーションマシン」という最先端の装置があり、そこの仮想空間では自分が組み立てたプラモ同士を自由にバトルさせることができる。新作アニメの『ビルドファイターズ』と作品的なつながりはないが、“ガンプラを使った仮想バトル”という基本コンセプトは完全に同じだ。そのシミュレーションマシンを通じて、狂四郎がさまざまなライバルたちを激戦を繰り広げ、友情をはぐくんでいく姿が描かれる。
敵はそこらへんの腕自慢からアメリカ育ちの天才少年、反則をものともしない卑劣なモデラーまで実に個性的。狂四郎はたびたびピンチに陥るが、持ち前の発想力と“プラモスピリット”で苦難を乗り越えていく。シミュレーションに使用されるプラモは『ガンダム』からの出典が多いが、ほかにも『サブングル』『ダグラム』といった他作品、さらには実在する戦闘機(ゼロ戦やF-15など)まで、こちらも個性的なキャラクターに負けず多彩である。
メインとなるシミュレーションバトルは読者から見れば『ガンダム』そのものの臨場感あふれる描写がなされ、パイロット(モデラー)たちを乗せ地上から宇宙まであらゆる戦場で激戦が展開される。バトル内容もロボットの強さだけで決まるのではなく、独自の「改造」が決め手になるのも大きな特徴。関節部に輪ゴムを仕込んで柔軟な可動を実現したり、バッテリーを内蔵した強敵にはキャノン砲で水を浴びせて漏電させる……といった読者を飽きさせない工夫があちこちに散りばめられている。
また、1980年代当時のプラモは現代とは比較にならないほど技術面で劣っているが、そこを逆に利用したバトル展開もおもしろい。たとえば狂四郎がピンチに陥ったシーンでも「シャア専用ザクのプラモは足首が曲がらない」といった仕様から相手の弱点を見つけ、あざやかに逆転してのけたりする。まさにプラモへの深い愛情と理解がなければできない戦い方といえるだろう。
ストーリーは後半になるほどシリアスの度合いを増していくが、基本的にはプラモマニアな少年の痛快バトル漫画で、30年後の今読んでも十分に楽しめる。新作アニメ『ビルドファイターズ』で描かれるであろうガンプラの進化と対比する上でも、チェックしておきたい良作だ。
【作品データ】
・原作/作画:クラフト団/やまと虹一
・出版社:講談社
・刊行状況:全10巻(講談社漫画文庫/完結)