【あらすじ】
熱烈なビートルズのファンである、蜂矢翔、鳩村真琴、鷹津礼、鶴野コンタ。彼らは、ビートルズが解散してから30年以上経つ現代でビートルズのコピーバンド「ファブ・フォー」を結成し、「本物のビートルズよりも上のテクニック」をステージで披露する日々を送っていた。
ところが、イチビートルズのコピーバンドである彼らは、ビートルズがデビューする前の時代の1961年3月11日に突然タイムスリップする。彼らは盗作する形でメジャーデビューしてしまい、葛藤に苦しみながらも世界的なヒット曲を連発する。もちろんそれらは既存のビートルズの曲であるが。クライマックスでは、イギリスのリパプールでビートルズと対面する。その時彼らがとった行動とは……?
【みどころ】
近年中国をはじめ諸外国の中で、見るに耐えないコピー商品が出回り、国内でも盗作疑惑のニュースを目にする機会は多い。想像の域を超えないが、作り手側としては盗作という行為に関して憤慨している人は多いのではないだろうか。盗作した側は、当然しかるべき法的処罰を受けるべきであろう。
しかし、もしあなたがタイムスリップし、自分が現在のヒット曲や諸作品をすでに知っていて世の中に出る前の状況に陥ればどうだろうか? ましてや、自分が最も尊敬するアーテイストのいる時代にタイムスリップしたのであれば。
本作『僕はビートルズ』は、ビートルズを心の底から愛する4人のそんな心の葛藤に着眼しながら、音楽が持つ大きな力を描いている。印象に残るシーンが一つある。マコトはビートルズの新曲と自分たちのオリジナル曲を世界のヒットチャートで競わせたいと考え、ショウを説得して行動を起こす。しかし、歴史は曲がる。皮肉にも「ファブ・フォー」の才能に、ビートルズというバンド自体の存在が危ぶまれることになる。「ファブ・フォー」はラストシーンでビートルズのメンバーに、自分たちは未来から来たと打ち明ける。
もし自分が……と考えると、両手を挙げてNO!!と言える考えの持ち主はどれくらいの数を数えるだろうか? 人間の良心に問いかける名作。
『アクター』『沈黙の艦隊』『ジパング』『太陽の黙示録』などヒット作を持ち、講談社漫画賞を3回、小学館漫画賞を1回受賞している日本を代表する漫画家の一人であり、イチビートルズファンである、かわぐちかいじの画力にも注目したい。
【作品データ】
原作者:藤井哲夫 作画・かわぐちかいじ
出版社:講談社
刊行状況:全10巻