イギリスの首都ロンドンで開かれたロンドン最大のコミケ「コミックコン2013」(5月24~26日開催)で、『カウボーイビバップ』の渡辺信一郎監督が同作品実写化のプロジェクトはまだ進行中であると明かした。
2009年にハリウッドにて実写映画化の制作が発表された同作。キアヌ・リーブスが主演を務めると発表されて一時期話題沸騰したものの、資金難による制作中止が示唆されていた。制作発表されてから4年、その後沈黙を守ってきた渡辺監督は、Red Carpet News TVのインタビューにこう答えている。「ライブアクション(実写)の『カウボーイビバップ』はアメリカ(ハリウッド)でプロジェクトが進んでいます。ただ、詳しいことはシークレットなので言えません」と。なかなか思わせぶりな言い回しである。
『カウボーイビバップ』は1998年に人気を博した日本のアニメである。メガヒットシリーズ『ガンダム』でお馴染みの「サンライズ」としては、初めて世に出した“ロボットアニメではない”作品だ。
SF作品には珍しく、ポップ・ミュージックをBGMとしてふんだんに使用している。タイトルどおりビバップなどのジャズは同作に欠かせない。また音楽ジャンルにこだわらず、ブルース、ロック、テクノなどの音楽を駆使し、近未来を描きながらどこか哀愁を漂わす独特の世界観を築き上げている。いい意味で古臭く、新築のマンションに並ぶアンティーク家具のようにスタイリッシュで味があるのだ。
筆者の個人的感想だが、その作風はハリウッド映画『ゲッタウェイ』(1972年)を彷彿させる。また、『シティーハンター』、『コブラ』、『ルパン三世』と同じくハードボイルドでありながら、独自のキャラクター性が浮き彫りにされていて飽きることがない。
そんな『カウボーイビバップ』の実写映画化に対し、渡辺監督は「『カウボーイビバップ』という作品は、アメリカ映画に影響を受けた部分が大きいんです。アメリカ人がそれをどんな映画にするのか興味を持っています」と映画への想いを語った。また、日本アニメの実写映画化をどう思うか訊かれると、「作品のフィーリングを(雰囲気)壊さないようにしてほしいと思っています」と答えた。
渡辺監督はインタビューの中で、今秋から放送予定のTVシリーズについても語ったという。昨年、14年ぶりにTVで再放送された同作だが、今度こそファン待望の新しいストーリー展開となるのか。期待が高まる。
世界中に日本アニメのファンは多い。映画監督や脚本家がそのファンの一人ならば、実写化をしてみたいと思う気持ちも分かる。アニメ実写化の賛否は別として、日本のマンガやアニメが世界の巨匠たちをうならせていると思うと鼻が高い。しかし、『ドラゴンボール』のように原型をとどめていない映画では到底納得できない。意外にもそのファン心理は万国共通で、実写版『カウボーイビバップ』に対する不安は日本人だけのものではないようだ。
果たして原作ファンと渡辺監督の想いはハリウッド映画制作陣に届くのか。固唾をのんで見守るばかりである。
【コミックスデータ】
・『シューティングスタービバップ』
作:矢立肇 / 画:久雅カイン
出版社:角川書店
刊行状況:全2巻(完結)
・『カウボーイビバップ』
作:矢立肇 / 画:南天佑
協力:渡辺信一郎・サンライズ第2スタジオ・佐藤大
出版社:角川書店
刊行状況:全3巻(完結)
※いずれも「月刊ASUKAファンタジーDX」(角川書店)にて連載された