老いた博徒の生きざまがここに『老境博徒伝SOGA』

老境を迎えた麻雀打ちの活躍を描いた『老境博徒伝SOGA』(作画:三好智樹、瀬戸義明、原作:森橋ビンゴ、協力:福本伸行)が面白いです。

1万円札の肖像になった渋沢栄一の言葉に「四十、五十は洟垂れ小僧、六十、七十は働き盛り、九十になって迎えが来たら、百まで待てと追い返せ」があります。『年を取ってまで働くのはなあ』と思ってしまいますが、勝負の世界は違うのでしょうか。本作の大元は麻雀漫画『天 天和通りの快男児』(福本伸行)で、『アカギ 闇に降り立った天才』、『HERO -逆境の闘牌-』『闇麻のマミヤ』などと同様に、スピンオフ作品の1つです。主人公は、かつて10年以上も裏の麻雀界に君臨し「西の怪物」とも呼ばれた僧我三威(そが みつい)。彼は『天 天和通りの快男児』の東西決戦でも、その雀力を存分に見せつけるのですが、そこから何年かして引退した姿を描いています。

殺伐とした博打から離れて安穏とした余生を考えていた僧我。彼が入所したのは老人ホーム「マノワ・ド・ボヌール」(フランス語で幸運の館)でした。ここが麻雀、パチンコ、パチスロなどのギャンブルを老化対策のレクリエーションに取り入れていたことから、再び博打の沼に足を踏み入れていきます。もっとも引退を決意したくらいの状況なので、僧我は指先を思うように動かせなかったり、顔見知りの名前を思い出せなかったりと、厳しい状況も垣間見えるのですけれども、その辺りはギャグ模様で描いています。

入所者同士の麻雀を皮切りに、麻雀アプリで重課金、麻雀動画の大バズリ、果ては眼鏡をかけた三つ編みの美少女キャラ「銀我ミツコ」で麻雀VTuberデビューと、現代の麻雀沼に足どころか膝、そして腰と、どんどん深くはまっていきます。話が進む中で、かつてのライバルの1人である浅井銀次(あさい ぎんじ)も登場。当然、こちらも年を取っているので、老境に達した博徒のギャグ交じりのやり取りが楽しめます。

直近の連載では、銀次の孫娘である女子高生(女子中学生かも)のカナがホームに来訪。彼女は実際の麻雀こそ初心者ながらも麻雀アプリでは強豪と分かり、僧我へ対戦を申し込んできます。初心者故のドタバタは別として、カナの麻雀マナーの良さに僧我は感動しているのですが、どうも雲行きが怪しそうです。僧我ですら電流が走るほどのカナの可愛さに、西の怪物と呼ばれた僧我がズルズル負けてしまうとは考えにくいものの、まさかの一撃もありそうです。老境博徒の打牌の行方を楽しみにしましょう。

【作品データ】
作品:老境博徒伝SOGA
作画:三好智樹、瀬戸義明
原作:森橋ビンゴ
協力:福本伸行
連載:竹書房「近代麻雀」連載中
刊行状況:1~2巻発売中、以下続刊

【作品データ】
作品:天 天和通りの快男児
作者:福本伸行
連載:竹書房「近代麻雀ゴールド」連載
刊行状況:全18巻