祖父の古書店を継いだ三姉妹と恋をめぐる物語『百木田家の古書暮らし』

古書店が集中している界隈のことを、よく「古書店街」と呼びます。東京では本郷古書店街・早稲田古書店街・神田古書店街が、大阪では阪急古書のまちが有名ですね。特に、神田古書店街は神田神保町にあり、世界でも最大級の古書店街として知られています。

今回紹介するのは、本の街・神保町にある古書店を舞台にした、冬目景先生の『百木田家の古書暮らし』です。古書に限らず、本好きな人であれば本の話だけでも十分に楽しめます。

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【作品紹介】

舞台は、本の街・神田神保町にある古書店・魁星書房。そこで暮らす三姉妹、長女・一果、次女・二実、三女・三稔が主人公です。

もともとは、横浜に住んでいた百木田三姉妹。しかし、半年前に元古書店店主だった祖父が亡くなります。

祖父は8年前に経営者を引退し、古書店は知り合いに任せていました。その知り合いも引退してしまい、経営を委託する人がいなくなってしまったのです。

しかし、その祖父の遺言は「神保町の古書店(魁星書房)を残して欲しい」というもの。

相続人は父親のみのため、父が継ぐことになりますが、簡単にアメリカの大学教授を辞めることはできず……。

弁護士と相談して、横浜の自宅を売ることにしたと報告。三姉妹は、強制的に神保町へ引っ越しを余儀なくされました。

長女には会社があり、三女は高校生ということもあり、本好きだった次女が会社を辞めて継ぐことに……。

本作は古書店を舞台にした、三姉妹それぞれの恋と暮らしを描いた群像劇です。

【見どころ】

『百木田家の古書暮らし』の見どころは、下記のふたつにあります。

  • 古書店経営の裏側
  • 三姉妹それぞれの恋の行方

古書店を舞台に描かれている作品なので、当然古書店経営の裏側や生活者としての視点も描かれています。

たとえば古書店経営でいえば、蔵書整理の仕方や値づけ、古書の仕入れ、同業者とのつながりなど、本好きであれば誰もが知りたいと思っていることが描かれている点が本作の大きな魅力です。

そこに、魁星書房の書庫に眠るお宝をめぐる謎など、ミステリアスな要素が絡みます。

次に、冬目景先生作品の特徴といえば、やはり恋愛の描き方。それは本作でも発揮されていて、三姉妹の恋愛感情にも反映されています。

長女は先輩への恋心をズルズルと引きずり、三女は思いを寄せている同性のマナにご執心、次女は恋心にまったくの鈍感です。

とにかく焦らして焦らして焦らせるので、冬目先生のマンガファンにはとてつもなく楽しみな作品といえます。

【作品データ】
作者:冬目景
出版社:集英社(グランドジャンプ)
公式ページで試読できます
刊行状況:既刊5巻(以下、続刊)