世の中にはさまざまな言葉や表現手段があります。人を喜ばせたり、怒らせたり。悲しませたり、楽しませたりする言葉を使い、私たちは詩や小説、コラムなどさまざまな手段で表現します。
皆さんもご存知の通り、人間は地球上に現存する生物の中で、唯一言葉を使って表現できる動物です。しかし、当たり前すぎて言葉について考える機会も少ないかもしれません。今回は、言葉と人の関係について考えるきっかけとなる、鯨庭先生の『言葉の獣』を紹介します。
【作品紹介】
本作の主人公は、女子高生でクラスメイトの東雲と薬研です。他人が発した言葉を「獣」の姿で見ることができる共感覚がある東雲と、詩に強い関心を持っている薬研(やっけん)(※)。
※本来の読み方は「やげん」ですが、作内では東雲から「やっけん」と呼ばれているため、表記に合わせています。
授業中急に立ち上がる時がある東雲に興味を持った薬研。ある日の放課後、スケッチブックになにか描いているのを見て、思い切って話しかけます。
東雲が描いたユニコーンの絵を見て、思わず「綺麗」とつぶやいた薬研。スケッチブックを取った東雲は、おもむろに薬研が言った「綺麗」を表した獣の絵を描きはじめ……
獣を通して言葉の真意がわかる東雲と、詩を愛する薬研が、言葉の生息地を探索する物語です。
『怖い』『わからない』 pic.twitter.com/uH9t1kyA20
— 言葉の獣 (@BeastsOfWords) August 25, 2023
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【作品の見どころ】
『言葉の獣』の見どころは、言葉をめぐる東雲と薬研のやり取りにあります。
東雲のいう「言葉の生息地」に入ると虎になる薬研は、一緒にさまざまな言葉の森を探索します。
薬研の詩で出てくる言葉のようにかわいい動物が出てくることもあれば、誹謗中傷のように痩せこけた不気味な姿が出てくることもあり、その形態はさまざまです。
そのたびに生身の人間である東雲は傷つき、それを虎になった薬研が助けるやり取りは、言葉の本質を見せられているように感じられます。
X上にある『言葉の獣』のポストには、さまざまな言葉の獣が描かれているので、これを見ながら本作を読むと、より楽しめるのではないでしょうか。
【作品データ】
・作者:鯨庭
・出版社:リイド社(トーチweb)
※公式ページで、試し読みできます
・刊行状況:既刊2巻