「ZINE」に魅せられたふたりの高校生による令和の文化系青春物語『RIOT』

インターネットを介した個人の発信活動が用意になってきた現在、古くからある「ZINE(ジン)」が最注目されています。「ZINE」とは、個人や小規模のグループが作る雑誌のような発行物のことです。

その歴史は意外と古く、約90年前(1930年代)よりあるとも言われています。その「ZINE」に魅せられたふたりの高校生を主人公に、雑誌づくりに取り組んでいく過程を描いた物語が、塚田ゆうた先生の『RIOT』です。作者自身も、カルチャーZINEを発行しています。

【作品紹介】

海が見える穏やかな田舎町を舞台にした本作。ふたりの高校生、アイジとシャンハイが主人公です。ふたりは、閉塞感や焦燥感を抱えて、日々を生きています。

そんな彼らは「POPEYE」を読んで、さまざまな情報を吸収中。

シャンハイ(上海)の兄は雑誌で特集記事を書いており、シャンハイ自身がそれを読んで感じた世界の広がりを、嬉しそうにアイジに話していた時のことです。

アイジはシャンハイに「雑誌作ってみたら?」と言います。

この一言から、アイジとシャンハイによる「ZINE(雑誌)」製作がスタート。

ふたりに見える世界を描く、令和の文化系青春物語です。

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【見どころ】

「RIOT」の見どころ。それは「これからすごく面白いことがはじまるのではないか」というワクワク感にあります。

皆さんも、何かをはじめようとする時、もしくは新しいことを妄想している時、何者にも代えがたいドキドキを感じたことがあるのではないでしょうか。

本作では、その気持ちがページ全体で表現されています。

特に印象に残ったのは、アイジが「地方の半島の、こんな片田舎の高校で、みんなどんな世界を見てんだろうな」と話しかけた時に、シャンハイが言った「案外みんな、手元の世界しか見てないんじゃない?」という一言です。

筆者自身も田舎の公立高校育ちで、高校時代に同じことを考えていました。

この気持ちを、表現しようとするアイジとシャンハイ。

ふたりが紡ぐ物語は、これからも要注目です。

【作品データ】
・作者:塚田ゆうた
・出版社:小学館(月刊!スピリッツ)
ビッコミで閲覧可能
・刊行状況:既刊1巻