あまり良くないことだと思いつつも、ついついかつて好きだった人のことを未練たらしく思い出してしまう経験を持っている男女は、あえて誰にも言わないだけで実は多いのではないでしょうか。
実際、自分で抉ろうとしたらかなり深い傷だったというのも、よくある話です。そんな女性ふたりが、誰にも言えない恋心を癒やす物語として、ばったん先生の『そしてヒロインはいなくなった』を紹介します。
【作品紹介】
本作の主人公はふたり。オシャレが好きでエネルギッシュな老女・トラさん、ボーイッシュな見た目に反して中身は夢見る乙女の妙子です。
物語の舞台は、ある夏日の日に行った行きつけの飲み屋。トラさんが、タバコをふかしながら買ったマニキュアについてマスターと話しているところから始まります。聞いていると、マニキュアの話からかつて別れた男の話へと変わっている様子。
妙子は「関わってはいけないタイプ」と思ったものの、最後に「アタシは世界一不幸な女」と言ったところで割って入り、3年前に別れた男に未練たらたらな話をします。
最悪な出会いだったふたりは、いつしか意気投合して恋愛話をする仲に。
恋心が傷ついた50歳差の女同士が出会い、お互いにその心を抱きしめ合うシスターフッドストーリーです。
【見どころ】
本作の見どころは、割り切れない女の友情を描ききっているところにあります。
本当は嫌いなんだけど、嫌いになれない。憎むべき立場なのに、なぜか好きになってしまう。そんな経験をしたことのある人は、意外といるのではないでしょうか。
いいように扱われているとわかっていても、やはりその人のことが好きという心理は、誰でも陥るかもしれません。
また、妙子のもとにも3年前にいなくなった恋人が現れ、そのことでトラさんとの関係に変化が訪れるなど不穏な空気が広がります。
失恋でつながっている二人の関係はどうなっていくのでしょうか。
【作品データ】
・作者:ばったん
・出版社:双葉社(JOURコミックス)
※Webアクションで試し読みできます
・刊行状況:既刊3巻