2018年の安倍晋三内閣総理大臣時代に提唱された「働き方改革」により、多種多様な働き方が推奨されるようになりました。これにより、副業も解禁。許可制を取っているところが大半ですが、サラリーマンもさまざまな手段で収入を得やすくなったのではないでしょうか。
今をさかのぼること20年前は、ワーク・ライフ・バランスやサービス残業、コンプライアンスなどの問題が横たわっていました。その時代を舞台に、雑誌編集部で働く人を主人公として「働くとはなにか?」をテーマに描いた、安野モヨコ先生の『働きマン』。17年ぶりの最新刊が6月27日に発売されました。
デジタルコミック営業部の部長が、これから読みたい本は『働きマン』。
6月27日に17年ぶりの新刊(5巻)が出るのを踏まえ、全巻を読み返したいとのことでした。#働きマン #安野モヨコ pic.twitter.com/DbTuUSqpEk
— 講談社 (@KODANSHA_JP) June 27, 2024
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【『働きマン』とは?】
舞台となるのは週刊誌「JIDAI」の編集部。そこで編集者として働いている、松方弘子が主人公です。
本作は、編集者の松方弘子と彼女の周辺にいる上司・編集長・同僚たちが、悩み苦しみながら働くことの意義や仕事する意味を探し、それぞれの人生に向き合っていく過程を安野モヨコ先生が描きました。
2007年から2008年にかけて「週刊モーニング」に掲載された、単行本未収録話(Vol.30~Vol.34)をまとめ、当時のまま収録したものです。
本作は2006年にフジテレビのノイタミナ枠でアニメ化され、その翌年・2007年には菅野美穂さん主演でドラマ化されました。
【作品の見どころ】
掲載された2007年当時は、世界に目を向けるとアメリカのサブプライム問題にはじまり、原油価格の高騰やハマスのガザ制圧がありました。国内では、消えた年金問題、食品偽装、海上自衛隊のインド洋からの撤退など、世界・国内ともに混迷の時代でした。
2007年頃に第一線で働いていた人は、今は部長・役員など、会社でもそれなりの地位についている人も多いと思います。最初にも書いたように「働き方改革」により、働き方も様変わりしており、令和の現在ではマッチしない部分も多いでしょう。
それでも、主人公だけでなく一緒に働く上司の成田や梅宮編集長など、特定の登場人物にスポットライトを当て、まだ出版業界に「熱さ」が残っていた中、その業界で自分の働き方や生き方を確立するためにもがく様や人間くささを描いている点は、当時ほぼ同世代だった私たちにとって懐かしさが残ります。
本作を令和に入ってから社会に出た世代が手にとって、どのような反応をするか見てみたいですね。
働きマン新刊出たの?!!!大学の時に読んでたけどもう新刊は出ないものだと思ってた、社会人になって親にもなった今読んだらどう映るだろう https://t.co/ixedc2O636
— めーちゃん (@doc_meechan) July 3, 2024
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【『働きマン』連載再開はなるのか?】
2008年に安野モヨコ先生の体調不良を理由に、休載が発表されて以来16年にわたって続編が描かれていません。
その理由は「現実世界で出版業界自体が行き詰まりを迎えている中、その厳しい現実を主人公が解決できるストーリーを編み出せない」というものです。
休載中に少しでも状況が好転したのであればともかく、週刊誌は売上が減少する一方。マンガ雑誌・総合週刊誌ともに元気がなく、休刊も相次いでいる状況です。それを考えれば、まったく新しいテーマに変えない限り、再開は難しいのかなと思います。
それはさておき、「JIDAI」編集部のメンバーが働く姿を見て、ひとつ元気をもらえました。
【作品データ】
作者:安野モヨコ
出版社:講談社(週刊モーニング)
※公式サイトで試し読み可能
刊行状況:既刊5巻(休載中)