「好きなものを好きなままでいい」多様な価値観を描く『先輩はおとこのこ』

「蓼食う虫も好き好き」ということわざがあります。持っている価値観・好みは人それぞれという意味で使われますが、周囲と違っているという理由で価値観が否定されるものではないはずです。しかし、それが理由で自信を失うことは少なくないでしょう。

自信を失うところまでいかなくても、周囲の目を気にするあまりに本当の気持ちを押し殺してしまうことはあるかもしれません。そんな男女3人が自分を取り戻す物語が、ぽむ先生の『先輩はおとこのこ』です。トライアル連載時から注目を集めた本作は、2024年1月時点で1億8,000万ビューを突破。現在は、3人の中学生時代を描く『先輩はおとこのこ 出会い編』が連載されています。

【『先輩はおとこのこ』とは?】

主人公は、高校2年生の男子・花岡まこと。男らしく振る舞うことを求める母親の影響で、家では男らしい格好をしています。しかし、本当は可愛いものが好きで、学校では女子生徒の制服を着用して過ごしている、いわゆる男の娘です。

高校1年生の女子・蒼井咲は、そんなまことに好意を寄せます。まことのことを女性だと思いこんでいる咲は、同性に告白するつもりでラブレターを入れます。

放課後に教室で告白するものの、本当は男の子であること、誰も好きになったことがないことを理由に断りを入れられます。しかし、そんな程度のことでは諦めません。それどころか「先輩の初恋の人になってみせます」と言い切る咲。

そこに、まことの幼なじみで複雑な感情を抱いている2年生の大我竜二が絡み、ちょっと複雑な三角関係がはじまります。

「普通とは何か?」「自分らしさとは何か?」に向き合い、心身ともに成長していく姿を描く物語です。

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【作品の見どころ】

最初に印象に残ったのは、母親の考える普通に無理やり当てはめようとする、まことの苦悩です。

幼い頃からドレスやハイヒール、女性もののハンカチなど可愛いものを好んでいましたが、そのたびに母親から、一般的な男の子が好むものを押しつけられてきたまこと。そのため、母親の前では本当に好きなものを言えなくなっていました。

周囲の目を気にしてしまい、思わず素の自分を隠してしまった経験は、多くの人が持っているでしょう。

実際、自分が好きなものについて話しているだけにもかかわらず、それが一般的な価値観と異なるだけで、つい「ごめん」と言ってしまったことのある人も多いかもしれません。

人は、つい典型的な「〇〇らしさ」に引っ張られ、それ以外の価値観を否定しがちです。しかし、その普通でさえ作られたものという可能性もあります。

進路に迷っている学生はもちろんのこと、親世代の皆さんなど幅広い世代におすすめしたいマンガです。

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【作品データ】
・作者:ぽむ
・出版社:一迅社
LINEマンガでも読めます
・刊行状況:既刊8巻