一定の年代以上だと、幼い頃に「男の子(女の子)らしくしなさい」と、親から言われて育ってきた人は多いのではないでしょうか。それに反発する人もいれば、何も言い返さずに従った人もいると思います。
さて、雄性先熟という言葉があります。簡単にいうと「雌雄同体の動物で、雄性生殖器官が雌製生殖器官よりも先に成熟すること」という意味です。もしも人類が雄性先熟の世界だったならば、世の中はどうなるでしょうか? 女性化することで生ずる戸惑いを描いた作品として、御厨稔先生の『大きくなったら女の子』を紹介します。
【『大きくなったら女の子』とは?】
人類は誰もが最初は男として生まれる世界が、物語の舞台です。
この世界では、身体が大きく育った人の中から約1割が女性化。当然ながら、男性の特徴はだんだんと退化していき、体内では子宮ができ、体外には乳房ができるなど女性の特徴が現れていきます。
女性は「命を産む」存在という点では同じですが、より多くの子を産むこと、そして強く賢くかっこよくあらねばならない、社会のリーダーになることを求められるわけです。
では、男性はどうかというと、男性はおしとやかに可愛らしく、女性を全力で支える役割を担っています。
その中で、身体や欲、モテ・友情など思い通りにならないことに振り回されながら、この世界を生き抜いていく女の子たちの物語です。
https://x.com/mikuriyaminoru/status/1784019947628408859
【作品の見どころ】
本作では、数話ごとに主人公が入れ替わるオムニバス形式です。
1巻では、下記の人物に焦点が当てられています。
- もともとはさえない男の子: 女子高生 かぐや
- もともとは女ウケ重視のキラキラ男子: 元OG(オフィスジェント) 紬
この中から、かぐやのエピソードを紹介しましょう。
かぐやはもともとはさえない男の子でしたが、大きく育ったことで女性化していきます。
よく周りの男子にその見た目をいじられていましたが、女性へと変化していくさまに戸惑う毎日。
そんな中、いつもちょっかいを出されていた糸井くんのことが気になります。
「守ってあげなきゃ」と思うかぐやですが、なかなかうまく行きません。
そんな中、偶然であった3人の女性と触れ合うことで、自分なりの接し方を見つけます。
私たちも日常の中で、つい無神経な一言を発してしまい、人を傷つけているかもしれません。
単純な男女逆転物語ではないからこそ、私たちが普段持っている固定観念を揺さぶられ、性別の「らしさ」に引っ張られすぎている自分に気づくのです。
https://x.com/mays0ng/status/1790758903422345376
【作品データ】
作者:御厨稔
出版社:講談社(モーニング・ツー)
※コミックDAYSでも読めます
刊行状況:既刊1巻