本を支える裏方の情熱あふれる物語!『くらべて、けみして 校閲部の九重さん!』

「本や単行本を作るのは出版社。では、その出版社の中で、そこに関わっている人の職業で何を思いつきますか」と質問されたら、どう答えますか? おそらく、編集者・作家・マンガ家と答える人が多いでしょう。

しかし、本は編集者や作家だけでは作れません。一般の人が知る機会は少ないものの、いわゆる「縁の下の力持ち」的な存在が、各出版社・新聞社にいる校閲者の存在です。その実態を紹介したマンガとして、今回はこいしゆうか先生の『くらべて、けみして 校閲部の九重さん』を紹介します。

「校閲」と聞いて、その仕事内容にピンとくる人は少ないでしょう。校閲とは、誤字・脱字などのチェックの他、記述内容の不備や差別表現を使っていないかなどの確認を行う、出版業にはなくてはならない仕事です。

ちなみに、タイトルは「校(くら)べる」と「閲(けみ)する」が、その語源となっています。それぞれ下記のような意味があります。

  • 校(くら)べる:照合して誤りを正すこと
  • 閲(けみ)する:調べて、見て確かめること

本作の主人公は、新頂社に勤務する校閲者の九重(くじゅう)心さん。

多くの校閲OBや作家、同僚・後輩との秘話を通して、校閲の仕事を語ったコミックエッセイです。

作品の見どころは、出版前に間違いや設定の矛盾などを見つける「最後の砦」といっていい校閲部の苦労について、丁寧に描いている点です。

実在する現役作家の実名や校閲部OBのアドバイスも、作品にリアリティを醸し出しています。

なんといっても、作品全体を彩る言葉は、主人公・九重心のこれでしょう。

”百年後に残る一冊を作っていくという意思よ”
(第1話 読んではいけない、コミックス17ページより引用)

「この覚悟がないとやっていけない」という、主人公の強い気持ちを感じた一言でもありました。

また、作家(重松清氏)のコメントが載ったPOPにも校閲が載っており、読む前から楽しませてもらえる作品でした。

お仕事マンガやお仕事系のコミックエッセイが好きな人には、ぜひとも一読をオススメします。

【作品データ】
作画:こいしゆうか
協力:新潮社校閲部
出版社:新潮社
刊行状況:全1巻