「本や単行本を作るのは出版社。では、その出版社の中で、そこに関わっている人の職業で何を思いつきますか」と質問されたら、どう答えますか? おそらく、編集者・作家・マンガ家と答える人が多いでしょう。
しかし、本は編集者や作家だけでは作れません。一般の人が知る機会は少ないものの、いわゆる「縁の下の力持ち」的な存在が、各出版社・新聞社にいる校閲者の存在です。その実態を紹介したマンガとして、今回はこいしゆうか先生の『くらべて、けみして 校閲部の九重さん』を紹介します。
「校閲」と聞いて、その仕事内容にピンとくる人は少ないでしょう。校閲とは、誤字・脱字などのチェックの他、記述内容の不備や差別表現を使っていないかなどの確認を行う、出版業にはなくてはならない仕事です。
『くらべて、けみして』。校閲の仕事、昔からずっと憧れていた。奥が深いな……。
著者や編集者との調整をはじめ、苦労も多いことを知る。#読了#くらべてけみして pic.twitter.com/QvyVPLCsWq— そよ (@gwjb_tea) February 11, 2024
ちなみに、タイトルは「校(くら)べる」と「閲(けみ)する」が、その語源となっています。それぞれ下記のような意味があります。
- 校(くら)べる:照合して誤りを正すこと
- 閲(けみ)する:調べて、見て確かめること
本作の主人公は、新頂社に勤務する校閲者の九重(くじゅう)心さん。
多くの校閲OBや作家、同僚・後輩との秘話を通して、校閲の仕事を語ったコミックエッセイです。
【縁の下の力持ち】
校(くら)べる・・・照合して誤りを正す
閲(けみ)する・・・調べて見て確かめるSNSやクラウドワークスなどで
「校正・校閲できます」発言を見かけますが
私には怖くてとても言えません💦100年後に残る一冊を作る
その意気込みを学び始めたばかりです pic.twitter.com/A9gIVBC3ZZ— ゆうこ@読書&校正 (@itosan20140923) April 9, 2024
作品の見どころは、出版前に間違いや設定の矛盾などを見つける「最後の砦」といっていい校閲部の苦労について、丁寧に描いている点です。
実在する現役作家の実名や校閲部OBのアドバイスも、作品にリアリティを醸し出しています。
なんといっても、作品全体を彩る言葉は、主人公・九重心のこれでしょう。
”百年後に残る一冊を作っていくという意思よ”
(第1話 読んではいけない、コミックス17ページより引用)
「この覚悟がないとやっていけない」という、主人公の強い気持ちを感じた一言でもありました。
また、作家(重松清氏)のコメントが載ったPOPにも校閲が載っており、読む前から楽しませてもらえる作品でした。
お仕事マンガやお仕事系のコミックエッセイが好きな人には、ぜひとも一読をオススメします。
本屋さんで置かれてるポップをいただいた。こういうの初めてもらったかも。ありがたいことに重版しました。#くらべてけみして pic.twitter.com/fPGlb5g8ZO
— こいしゆうか@小説新潮で連載中 (@koipanda) April 24, 2024
【作品データ】
作画:こいしゆうか
協力:新潮社校閲部
出版社:新潮社
刊行状況:全1巻