誤解からはじまった愛情の物語『気になってる人が男じゃなかった』

いつも利用しているショップの店員さんが、なぜか気になってしまう経験をした人は多いでしょう。「何が好きなのかな?」とか「どういう性格の人なんだろう?」と妄想するだけで、ドキドキする瞬間を楽しめますね。

いつも立ち寄るお店から始まったふたりの「愛情」を描いた物語で、SNSから注目された物語が、新井すみこ先生の『気になってる人が男じゃなかった』です。宝島社の「このマンガがすごい!2024 オンナ編」で第2位を受賞するなど、大きな注目を集めた本作は、作者のX(旧Twitter)で連載。フォロワーは100万人を超える人気アカウントです。

主人公は、女子高生・大沢あや。いわゆる陽キャで、クラス内では華やかな雰囲気のある女子です。大の洋楽ロック好きですが、話の合う人はいません。そんな彼女は、いつも立ち寄るCDショップにいるミステリアスな雰囲気を持つ「おにーさん」に一目惚れ。

その一目惚れした「おにーさん」は、なんと身近にいました。その正体は、同じクラスにいる女子・古賀みつき。叔父さんが経営しているCDショップでバイトしている彼女は、同じく大の洋楽ロック好き。しかし、クラス内ではほとんど目立たない生徒です。

誤解から知り合った彼女たちが、好きな音楽をキーワードとして、ひたむきかつ真摯に愛情を育んでいく過程を描いています。

思わずグッときてしまうのは、あやが見せるみつきへの思いです。

最初は誤解から始まった、みつきへの思い。

「それが友情からくるものか、それとも異なる感情からくるものなのか」について、あやは測りかねます。その一方で、みつきも適正な距離感に悩みます。

少しずつ距離は縮みつつあるものの、お互いにとってお互いがどういう存在なのかについて、お互いに思い悩む毎日。

あや、みつきとも、お互いがお互いのことを思い頑張っている姿が、尊く感じます。

通常のマンガ作品であれば、心理をじっくりと読ませるところ、SNSの特性を活かしてエピソードを細かく散りばめながら読ませる点も斬新で面白いですね。

今後も楽しみに読み進めていきます。

【作品データ】
作者:新井すみこ
出版社:KADOKAWA
作者X(旧Twitter)にて連載
刊行状況:既刊2巻