藤井聡太八冠誕生!将棋は女流棋士の世界も面白いよ

藤井聡太八冠の誕生により、老若男女問わず幅広い層から将棋界に注目が集まっている。そんな将棋棋士は現在のところ男性のみ。女性は別の制度に基づきプロとして活動する女流棋士がいる。そうした女流棋士の活躍を描いた漫画が『永世乙女の戦い方』(くずしろ/小学館)だ。

先達に憧れて道を志すのはスポーツも文芸も似たようなもの。本作の主人公である早乙女香(さおとめ こう)も、女流棋界のタイトルを総なめにするほど強い女流棋士である天野香織(あまの かおり)に勝つため、女流棋士の世界に足を踏み入れた。

もっともタイトルホルダーと戦う、つまりタイトルに挑戦するには、それぞれの棋戦で勝ち進まなくてはいけない。そこに至る相手の女流棋士らも、ひと癖どころかふた癖もみ癖もある女性ばかり。彼女達が盤上で見せる真剣勝負はもちろん、盤外におけるやり取りには興味深いものがある。

女流棋士のタイトル戦でも藤井八冠が注目を集めたような番勝負が行われている。直近の連載では女流王将戦の三番勝負が描かれ、天野香織女流王将に対してベテランの夏木小百合(なつき さゆり)七段が挑戦した。つまりは新旧の女王対決だ。ここでは結末を明かさないが、どちらも一歩も引かない名勝負を見せている。

なお、本作の監修を務める香川愛生(かがわ まなお)女流四段は女流王将のタイトルを過去に2期獲得。さらに今年、第45期女流王将戦を勝ち上がり7年ぶりとなるタイトル戦の三番勝負に出場した。残念ながら三番勝負で西山朋佳女流王将に敗退してタイトル獲得には至らなかったものの、作品とのリンクを感じさせるものがある。

将棋ブームに加えて、現実における女流棋士の活躍もあり、香のように将棋を指す女性が増えている。そうして裾野が広がるにつれ、女流棋士の数が増えているだけでなく、女流棋士が男性の棋士に勝利する場面も当然のように増えた。

現在の女流棋士の世界では、二強と呼ばれる西山朋佳四冠と里見香奈四冠が覇を競っている。ともに棋士一歩手前となる奨励会三段まで進んだ経歴があり、女流棋士が参加可能な棋戦でプロ棋士に勝つのも珍しくない光景となっている。彼女達に続いて現在の奨励会には中七海三段らがいる。近い将来にはプロ棋士となる女性が出てくる可能性が高そうだ。

さて、そうなった場合に本作の立ち位置はどうなるのだろうか。架空の創作物が現実の出来事に見劣りしてしまうのは避けたいところながら、「事実は小説より奇なり」なんて言葉もある。本作の主人公を含めた女流棋士らがかすむくらいに将棋界で活躍する女性が登場するかもしれない。

【作品データ】
作者:くずしろ
連載:小学館「ビッグコミックスペリオール」連載中
刊行状況:1~9巻発売中、10巻12月23日発売予定