『センゴク』シリーズの宮下英樹が描く2つの戦争『大乱 関ヶ原』『神聖ローマ帝国 三十年戦争』

『センゴク』シリーズの宮下英樹先生が2つの歴史作品を展開しています。

まずはリイド社「コミック乱」で2022年10月号から連載が始まった『大乱 関ヶ原』です。タイトル通りに関ヶ原の合戦をテーマとした作品。ただし合戦自体ではなく(もしかしたら描くかもしれませんが)、豊臣秀吉の死後、どのように関ヶ原の合戦に至ったのかを描く様子。

第一話に「筆者は『陰謀論』にも『忠孝論』にもその答えを求めない 『天下簒奪の陰謀』『豊臣氏への忠孝』当事者に左様な夢想に耽るような余裕があるとは思えない 何ゆえ関ヶ原の戦いが起こったのか その舞台裏を描く次第」としています。要するに、史実に宮下先生の推測をプラスして、関ヶ原の戦いに至る経緯を描くのでしょう。

これまでの作品では、石田三成が豊臣家への忠義を尽くしたのに対して、徳川家康が陰謀を張り巡らして戦場で圧倒する…ような展開が多いですよね。本作での徳川家康は五大老としての重責を背負いつつ、新たな歴史の流れに苦悩しています。どちらかと言えば、耐えに耐えている感じでしょうか。一方の石田三成はと言えば、まだまだ五奉行の一角。家康とは立場が異なれど、こちらも大きな歴史の流れの中で必死にもがいているように見て取れます。

結末は分かっている関ケ原ですが、近年、調査や研究が進んだことで、関ヶ原の戦いそのものや、そこに至る経緯にも新たな考察がなされています。例えば、小早川秀秋は当初から東軍(家康方)だった(当然ながら問鉄砲も無かった)、関ヶ原合戦は単なる遭遇戦だった、であるから島津の夜襲提案もなかった、などなど。そこに、宮本先生も本作で一石を投じることになりそうです。

奇しくも同年同月つまり2022年10月号からワン・パブリッシング「歴史群像」で連載が始まったのが『神聖ローマ帝国 三十年戦争』です。

主人公はフリードリヒ5世 (プファルツ選帝侯)。文武両道のイケメンだったそうで、彼がイングランド王の長女であるエリザベス・ステュアートと結婚するところから始まります。もっとも「第一章 冬の王」とありますし、三十年戦争の展開からすると、フェルディナント2世やグスタフ2世アドルフ、アルブレヒト・フォン・ヴァレンシュタインらをメインに描く展開があるかもしれません。連載が続けば…ですが。

などと書けるのは、連載を開始した「歴史群像」2022年10月号に掲載した宮下先生のインタビューを読んだから。そこに「グスタフ=アドルフとヴァレンシュタイン、彼らが激突したリュッツエンの戦いは描きたいところ」とあるためです。

インタビューでは三十年戦争に注目したきっかけも語っています。アマゾンなどでバックナンバーや中古も購入可能ですので、気になる方はぜひどうぞ。そして気になるのは連載ペース。本誌は隔月間発売なので年6冊。講談社「週刊ヤングマガジン」で連載されていた『センゴク』シリーズは『センゴク』から『センゴク権兵衛』の完結まで、約18年かかりました。時折休載もあったとは言え、週刊連載で18年ですからねえ。ここはワン・パブリッシングに頑張ってもらうよりありません。

そんな『神聖ローマ帝国 三十年戦争』ですが、単行本1巻が10月27日発売。これは『大乱 関ヶ原』2巻の発売日と同じです。たぶん…合わせたんでしょうね。書店の漫画コーナーに『センゴク』シリーズとともに『神聖ローマ帝国 三十年戦争』と『大乱 関ヶ原』の単行本が平積みされることを願います。

【作品データ】
作品:大乱 関ヶ原
作者:宮下英樹
連載:リイド社「コミック乱」連載中
刊行状況:1巻発売中、2巻10月27日発売予定

【作品データ】
作品:神聖ローマ帝国 三十年戦争
作者:宮下英樹
連載:ワン・パブリッシング「歴史群像」連載中
刊行状況:1巻10月27日発売予定、以下続刊