将棋ブームに乗って、そろそろ実写化も? 『龍と苺』レビュー

小学館「週刊少年サンデー」にて好評連載中の『龍と苺』が連載150回を迎えました。そろそろ実写化やアニメ化の話題がでないかと思ってるのですが、どうなんでしょうね。

約2年前に「今回の将棋ブームに乗れるか『龍と苺!?』」(http://comic-candy.com/archives/19884)で紹介した本作。展開が佳境に入りつつあるので、改めて取り上げてみようと思います。

本作の主人公は女子中学生の藍田苺(あいだ いちご)。はっきりとは描かれていませんが、学業と運動はそこそこ、父はサラリーマンで母はパートと家庭環境もそこそこ。ただし、いじめをしていたクラスメイトにいきなり椅子をぶつけるような吹っ飛んだ思考をしています。そこで生徒指導となっていた元教師の宮村さんから将棋を教わったため、将棋の道に進んでいきます。

もっとも苺自身は将棋が好きになったわけでも、将棋のプロを志したわけでもなく、将棋が男女関係なく競い合えるゲームと分かったためです。「なら碁でも麻雀でもeゲームでもいいじゃないの?」と思うかもしれませんけど、そこは将棋漫画なので。その後、地元の将棋大会で優勝、アマチュア竜王戦の県予選で優勝、さらに全国大会でも優勝して、プロ棋戦である竜王戦の6組出場へと至ります。

アマ竜王戦で好成績(現在はベスト4)を得ると、プロ棋戦の6組に出場できるのは本作の通りですけれども、そうしたアマ棋士の戦績は1回戦突破ができるかどうかです。しかし過去にはベスト4に残ったアマ棋士もいました。逆に言えばベスト4止まりと。しかし本作の苺は6組ランキング戦を勝ち進み、ついに6組で優勝してしまいます。

初戦こそ「勢いだけ」のように甘く見られていましたが、勝ち進むにつれてプロ棋士も本気になっていきます。そこを勝ち抜いていくのですから、苺の才能の程が想像できるはず。そうして勝ち上がる中で、苺の性格が変わってきます。何事にも挑戦的なところはそのままなのですが、将棋や棋士を含めて将棋界に一定の敬意を払うようになっています。

直近の連載では将棋アプリの対戦で、対戦相手に「よろしくお願いします。」と挨拶のメッセージを送っています。将棋を教えた宮村さんも本望でしょう。ただし、メディアにインタビューさせるのはどうなんでしょうね。何か騒動が起こりそうな…。

本作では苺の対戦相手となるプロ棋士にも注目したいところ。「反社(反社会的存在)か」と見間違えられる山野辺、葉巻を愛用してマフィアのボスにも見えそうな守屋、仮面をして対局する宮下、対戦相手と殴り合う斎藤、釣りのふりをして川辺で何時間もたたずむ大鷹などなど、まあ奇人変人ぞろいです。

6組ランキング戦で優勝した苺は本戦トーナメントも勝ち抜いて、山野辺竜王とのタイトルを決する七番勝負に挑みます。勝機の薄い対局に挑む苺は悩んだ末、タイトルを2つ持つ斎藤に、頭を下げないまま「頭を下げに来た」と練習将棋をお願いしています。頼まれた斎藤が「どこが…」と思うほどおかしな日本語ですが、苺の頭の中では頭を下げているのかもしれませんね。

結果、練習将棋をしてもらえるようになったのは、苺の熱意と斎藤の思惑が一致したからこそ。それでも将棋界に疎い苺は賞金を丸ごと差し出す約束を結んでいます。勝てば4400万円、負けても1650万円と知ったら、苺はどうするんでしょうね。それがメディアインタビューの場だったら…、宮村さんの頭髪が心配です。

【作品データ】
作者:柳本光晴
連載:小学館「週刊少年サンデー」連載中
刊行状況:1~12巻発売中、以下続刊