祖父と父親との才能の違いに悩みながら上達する野球少年の物語『MAJOR 2nd』

WBCにおける熱狂、高校野球(春の選抜・夏の選手権)やプロ野球における盛り上がりなどを見ると、日本で野球がもっとも人気のあるスポーツなのも納得がいくところです。近年はYoutuberやサッカーなどに押され気味なものの、プロ野球選手に憧れる子どもたちも多くいます。

しかし親がプロ野球選手ともなると、周囲への期待や自分自身がしている期待とも相まって、そのプレッシャーは大きくなっていくことでしょう。今回ご紹介するのは、プロ野球選手を父親に持つ少年が挫折を乗り越えて野球に向き合っていく過程を描いた物語、溝田拓哉先生の『MAJOR 2nd』です。本作は『MAJOR』の続編になります。

主人公は、前作の主人公だった茂野吾郎の息子である茂野大吾。ちなみに、父である吾郎は野手として日本プロ野球に戻ってきて、現在は台湾プロ野球に籍を置く現役プロ野球選手です。

物語は、小学校の授業参観で「将来の夢はおとさんのようなプロ野球選手になることです」と作文を読んでいるところから始まります。しかし、小6の大吾は父親のように打ってよし、守ってよしというわけではありませんでした。

また、祖父である茂野英毅や本田茂治のように野球の才能に恵まれておらず、必然的にかかる周囲の期待に応えられない自分に嫌気が差し、一旦は野球を辞めてしまいます。

しかし、もともと所属していたチームの監督に人数合わせとして誘われ、同じ学校に転校してきた佐藤寿也の息子・光に触発されていくうちに野球への情熱を思い出し、本格的に取り組んでいく物語です。

主人公は、前作の主人公だった父親と違って傷つきやすく繊細な性格をしています。おそらく、一旦野球を辞めた理由もそこにあるのでしょう。佐倉睦子や光の激励など周囲の支えもあって、野球に戻ってくる過程を丁寧に描いているところに好感が持てます。

長期休載をはさみながら続いている『MAJOR 2nd』。現在は中学編(風林中学)に進み、光に自信を打ち砕かれたことによる戦意喪失や部員不足による廃部の危機などのさまざまなできごとがありながら、寿也の監督就任や合同チーム結成による廃部回避を経て、大吾及び風林中学野球部は成長中です。

スーパースターが主人公で活躍するというのが、野球に限らずスポーツをテーマにした作品の王道ですが、あえて一見凡人に見える少年を主人公にしたことで、より現実感のある作品になったと思います。

そういう意味では、前作の『MAJOR』とは違うテイストになっていますし、大吾と吾郎のキャプテンシーの違いを楽しめるでしょう。

これまで『MAJOR 2nd』は、2シリーズにわたってアニメ化されています。これまで長期休載を2度はさんでいる本作ですが、待ち望んでいる視聴者も多いので、高視聴率も期待できるでしょう。

作者の体調次第とはいえ、健康には気をつけて描ききってもらいたいですね。

【作品データ】
作者:満田拓也
出版社:小学館(週刊少年サンデー連載中)
刊行状況:既刊25巻