江戸を笑え『毒を喰らわば皿までも?』『大奥より愛をこめて』『北斎の娘。』

江戸時代を舞台とした漫画はたくさんあります。その中から、続けて楽しんでもらえる4コマ漫画を3作紹介しましょう。

江戸のグルメをコミカルに4コマ化した作品が、竹書房「まんがライフオリジナル」で連載中の『毒を食らわば皿までも?』(松阪)です。主人公のお福(おふく)は食べることが大好き。そこを見込まれ、大奥勤めの下っ端女中から毒見役に抜擢されます。命の危険すらある毒見役になることを“抜擢”として良いものかは悩ましいところですが、そこは楽天的な漫画の主人公で、「おいしいものが食べられる」の欲望が勝っています。

お福が仕えるのは徳川13代将軍の家定の御台所(正妻)である天璋院篤姫(てんしょういんあつひめ)。ちょっと前になりますが、2008年のNHK大河ドラマ「篤姫」では、宮崎あおいさんが演じました。時代としては、幕末に向けてドロドロしかかった状況と言えば良いでしょうね。

本作でも江戸グルメに絡めたのんびりムードの中で、将軍の跡取り問題や大奥の権力争いがチラホラ描かれています。そんな荒波を、お福がどう乗り切っていくかが見ものです。まあ、下っ端女中が権力争いに巻き込まれる可能性は極小なんですけどね。

同じ松阪先生の作品で、芳文社「まんがタイムオリジナル」にて連載されていたのが『北斎の娘。』です。タイトル通りに葛飾北斎の娘である葛飾応為(かつしか おうい)こと、お栄(おえい)を主人公としています。なお、2017年のNHKドラマ『眩~北斎の娘~』では、宮崎あおいさんがお栄を演じています。はい、余談です。

お栄の生没年は不詳ですが、活躍したのは1800年代の前半なので、時代的には『毒を食らわば皿までも』のちょっと前。そして『毒を食らわば皿までも』と異なり、江戸の市井が舞台となっています。画才があって男勝りな性格でもあるお栄が、父の北斎や他の画家らと切磋琢磨しながら、自分の画風を確立する様を描いています。実際には、もっと複雑だったんでしょうけど、そこを4コマ漫画として分かりやすくまとめた感じです。

もう1作も同じ松阪先生の作品。芳文社「まんがタイムオリジナル」にて連載されていた『大奥より愛をこめて』です。こちらの主人公は金髪碧眼の大奥女中である薪乃(まきの)。「そんな人いたの?」と思いたくなりますが、そこは漫画と割り切りましょう。

大奥での立場としては、お福よりもずっと上。徳川11代将軍の家斉(いえなり)の御台所である広大院寧姫などに仕えています。つまり時代的には『北斎の娘。』より、少し前か同じくらいです。

松前藩(今の北海道)から大奥入りした薪乃は、その容姿から異端視されることもあったのですが、お福やお栄に負けず劣らずのポジティブシンキングで乗り切っていきます。それどころか、最終的には大奥のドタバタを解決(?)し、周囲を味方につけて、大奥に入る前から思い焦がれていた男性の元へと渡りをつけていきます。要するにタイトル回収なんですね。

時代順は前述の通りですが、作品の発表順では『北斎の娘。』(2017年)、『大奥より愛をこめて』(2019年)、『毒を食らわば皿までも』(2022年~)となります。ただ、それぞれ独立した作品なので、気にせずに読んでも可。また、時代的に被っていなくもないので、三作の主人公である3人がばったり出会うようなスピンオフでもあれば面白いかなと考えています。

単行本となっていない松阪先生の作品では、ニコニコ静画「まんがタイム彩(sai)」にて『春雨平安日記』(https://seiga.nicovideo.jp/comic/45411?track=official_list_s1)もあります。タイトル通りに平安時代を舞台とした作品。機会があれば、こちらもぜひご一読(要niconicoアカウント)ください。

【作品データ】
作品:『北斎の娘。』
作者:松阪
連載:芳文社「まんがタイムオリジナル」
刊行状況:全3巻

【作品データ】
作品:『大奥より愛をこめて』
作者:松阪
連載:芳文社「まんがタイムオリジナル」
刊行状況:全3巻

【作品データ】
作品:『毒を食らわば皿までも』
作者:松阪
連載:竹書房「まんがライフオリジナル」連載中
刊行状況:1巻発売中、以下続刊