セックスレスと真正面から向き合った話題作!『あなたがしてくれなくても』

もっとも身近にいる他人が、夫婦であり家族です。いくら結婚して家族になったとしても、すべての価値観が一致しているとは限りません。不倫などの不貞行為は論外ですが、それ以外でも「こういう部分が受け入れられない」と思う部分は誰にでもあるはず。

それが積み重なると、自然とセックスレスになりがちです。そんな夫婦二組の心理描写を描いた作品として、今回はハレノ晴先生の『あなたがしてくれなくても』を紹介します。2017年から連載がはじまり、コミックスは紙・電子合計で810万部を突破している人気作です(2022年10月現在)。

主人公は、東京で働く32歳の会社員・吉野みち。夫の陽一(陽ちゃん)は35歳で、みちとは別の会社で働くサラリーマンです。結婚5年目で夫婦仲は悪いわけではないものの、2年ほどセックスレスに悩んでいます。

同僚が出産のため退職することになったところから、物語がスタート。それに触発されたことで、帰宅後に夕飯を作っているとき、陽ちゃんに呼びかけるのですが、結局はぐらかされてしまいます。

その後、同僚(先輩の)新名誠から会社の飲み会後に誘われ、思い切ってセックスレスのことを相談。すると、笑いながら「うちもレスなんだよね」と返ってきたのです。

ふたりは同じ悩みを持つもの同士。お互いに家庭があるので、決して一線を越えることはありません。それでも、お互いに惹かれ合っていき……。

二組の夫婦を中心とした、レスをめぐる事情を描いた物語です。

セックスレスというのは夫婦が抱える問題のひとつ。悩む人は多くても、なかなか周囲に相談しにくいデリケートな問題ではないでしょうか。

本作の素晴らしいところは、この問題についてレスに悩んでいる側の観点からはもちろん、それをもたらしている側の観点からも丹念に心理を描いているところにあります。

主人公でいえばレスに悩むみち、なんとかやり過ごそうとする陽ちゃん。それぞれの心理を丁寧に描いているがゆえに、両方の気持ちがわかり、気づけば両方に感情移入してしまうわけです。

特に、実際に悩んでいる夫婦やカップルが読むと本当に共感できるのではないでしょうか。

筆者自身は未婚ですが、どのような理由があるにせよ、その状態が続いたら浮気や不倫に近い状態になってもおかしくはないだろうと思いながら、あっという間に全巻読み進めました。

公式サイトでは、第1話のためし読みができるので、ぜひ一度読んでみてください。

【作品データ】
作画:ハレノ晴
出版社:双葉社
Webアクションにて閲覧可能
刊行状況:既刊9巻