「嘘とホント」が入り交じる百合物語!『私の百合はお仕事です!』

「LGBTQ+」という言葉が広く用いられるようになって以降、ファンであることを公言する人が増えているコミックスのジャンルが百合(ガールズラブ)。一言で「百合」といっても、さまざまなジャンルがあり、その中でも特別感があるのが「エス(S、スール)」です。

「エス」とは、戦前の少女・女学生同士の強い絆を描いた文学ですが、現代の百合作品にもこれに近い世界観の作品があります。その中で、特に根強いファンが多いのが、今回ご紹介する未幡先生作の『私の百合はお仕事です!』です。本作は翌春(2023年春)アニメ化されます。

舞台はお嬢様学校を模した「カフェ・リーベ女学園」。主人公は、白木陽芽。億万長者と結婚して、玉の輿に乗ることを夢見る普通の女子高生です。そのため外面を良くして誰にでも好かれる自分を演じてきました。

そんな彼女は、ある日カフェ店長の舞にぶつかったことで怪我をさせ、その代わりに代理として半強制的にカフェで白鷺陽芽として働きはじめます。綾小路美月のことを「お姉さま」と読んだことで、姉妹(作内ではシュヴェスター、ドイツ語)の契りを交わします。

しかし、それはかつて一緒に遊んだ仲の子で、しかも外面(演技)を知っていて……。それでも純粋に相手を思う気持ちが感じられ、なんだか切ない作品です。

アニメ公式ページのキャッチコピーは、「嘘の世界の、ホントの気持ち」です。その言葉のとおり、あくまでも百合はカフェ内での演技という人もいれば、実はビアンという人も。告白されたことで心が揺らいで、少しずつ相手のことを意識しだす描写も描かれるなど、少しずつ百合作品の雰囲気も出てきています。

作品の設定としては、かつて映画化やコミカライズで人気を博した今野緒雪先生の『マリア様がみてる』に似ており、同作が好きな人であれば親しみをもって読み進められるでしょう。

さて、最初にも書いたとおり、白鷺陽芽役で小倉唯さん、綾小路美月役で上坂すみれさんが出演。2023年春にアニメ化されます。すでに出ている予告PVのできも良く、本作の放映も大変楽しみです。

【作品データ】
・作者:未幡
・出版社:一迅社(百合姫コミックス)
・刊行状況:既刊11巻