かつて日本で流行った「ギャル」。あえて日焼けをしてルーズソックスを履き、髪色も変えて大声で笑う……そんなイメージが先行するかも知れない。
しかし本作『ギャルとぼっち』のギャル・林原は見た目こそギャルだが、性格が非常にいい。
小学校の頃のトラウマで「ぼっち」を貫くひなに屈託なく話しかけ、同調圧力に屈しないのが魅力だ。
ぼっちは周囲からいつの間にか浮いてしまう場合が多いが、自ら望んでそうなる場合もある。
その場合のきっかけは何かしら存在する。
友人のいないひなは、ギャルの林原が苦手だった。もう時代遅れだし、大声で話すし、いつもみんなの中心にいる。なんとなく気に入らない感じだ。
そんな彼女だったが、林原は実はずっとひなと友だちになりたかった。「あの子と関わらない方がいいよ」と言われても、「あーしは仲良くなりたいから」と自分を貫く姿勢は爽快ですらある。
父子家庭というだけで不当にいじめられたり無視されてきたひなは、高校生になっても誰にも心を開かないが、自分の意志をしっかり持っている林原だけは普通に接してくれる。
無視を勧めるクラスメイトたちにも「なんで?」と返す芯のある林原。
こんなギャルなら悪くない──そう感じるだろう。
ひなは自ら孤立を選んだが、一方的に無視されたりいじめに遭う「ぼっち」もいるだろう。
心根のまっすぐな林原はひなと積極的に関わっていき、人と接することを遠ざけてきたひなは反応に困るが、少しずつ笑えるようになっていく。
その経緯が波乱万丈に描かれているのがみどころだ。
人は見かけによらないと言うが、まさしくギャルファッションだというだけでダメなレッテルを貼りたくはない。
陰でこそこそ悪口を言うクラスメイトより、明朗快活なギャルの方が、絶対に友人として信頼できるはずだ。
今こそ色眼鏡を外して改めて周囲の人間を見たくなる作品である。
【作品データ】
・作者:朝日夜
・出版社:スクウェア・エニックス
・刊行状況:全3巻