これぞ昭和の少女マンガ! バンパネラ(吸血鬼)として生きた少年の物語『ポーの一族』シリーズ

少年向けから少女向け、青年向け、大人の女性向けまで、マンガにはさまざまな作品ジャンルがあります。その中でも純文学に近いものが、少女マンガです。特に昭和40~50年代に発表された作品は、その傾向が強いのではないでしょうか。

そん中から「少女マンガの読者層を増やすキッカケとなった」と評価される、萩尾望都先生の異色作『ポーの一族』シリーズを紹介します。本作は、1976年の第21回小学館漫画賞少年少女部門を受賞した他、女性向け月刊誌の「CREA」(文藝春秋)が実施した少女マンガベスト100のアンケートで1位に選出されるなど、今なお根強い人気がある作品です。

全編における主人公は、澄んだ青い瞳が印象的な少年、エドガー・ポーツネル。彼は捨てられた森の中で、優しい老女に拾われた後バンパネラ(吸血鬼)に。その後は14歳の姿のままで生き続けることとなり、代償として大人になれない少年となってしまいます。

18世紀のヨーロッパにある皇族の館から物語がはじまり、20世紀・21世紀の現代世界にまたがった壮大な物語で、1972年から1976年にかけて連載され、全49話と番外編1話で一旦終了。

その後、2016年に連載終了から40年ぶりに新作を発表。現在に至るまで、断続的に連載が継続されています。

本作の魅力は、その独特の世界観にあります。「吸血鬼の物語」と聞くと怖いと感じてしまう人も多いでしょう。しかし実際には怖さはほとんど感じられず、少年のまま100年以上生きることとなった主人公の思いが描かれた作品です。

40年前に連載された『ポーの一族』と、40年後に再開されたそれ(『春の夢』以降)とでは絵柄が変わったものの、物語の厚みは「これぞ昭和の少女マンガ」で、子供の頃にファンだった人であれば再開後も含めて懐かしく読めます。

リアルタイムで読めなかった若い世代の方であれば、宝塚公演で知った人も多いでしょう。原作も時の流れを感じさせない新鮮さがあり、宝塚で知った方でも必ずご満足いただける作品です。

ぜひ、手にとって読んでみてください。

【作品データ】
・作者:萩尾望都
・出版社:小学館(別冊少女コミック、月刊フラワーズ)
・刊行状況:全5巻