長編海洋ロマン『海皇紀』ついに連載完結!

海皇紀(44) (講談社コミックス 月刊少年マガジン)

発売中の月刊少年マガジン8月号にて、『海皇紀』が最終回を迎えた。完結巻となるコミックス45巻は9月17日に発売される。100万部にせまる発行部数を誇る同誌の看板作品であり、『修羅の門』で知られる川原正敏がおよそ12年にわたって展開し続けた長編だけに、トピックの1つとして知っておいて損はないだろう。

『海皇紀』は現代の文明が滅んだはるか未来(と思われる描写がある)を舞台にした冒険ストーリー。人類の技術レベルは数百年前ほどまで退行しており、もっぱら戦争は剣と弓矢、海での移動は帆船といった具合だ。無人で動く人型兵器や電撃武器なども登場するが、それらはオーバーテクノロジー(魔導・カガク)として扱われている。

そんな世界の中、主人公をつとめるのはファン・ガンマ・ビゼンという名の飄々とした若者。あらゆる海を統べる「海の一族」で生まれた彼は、魔導の技術(カガク)で覇権を狙う勢力に立ち向かうため、信頼する仲間とともに世界中を縦横無尽に駆け巡っていく。ある時はたった一隻の船で一軍を退け、ある時は古代遺跡の中で蘇った超兵器と対峙する。ニホントウや体術がうなるアクションに加え、『沈黙の艦隊』のような“船vs船のかけひきを駆使した海戦シーン”も豊富。頭脳戦&ペテンあり、真っ向勝負のバトルありとエンターテイメント要素が非常に強い。

さて、今月号がラストなのだが、実はストーリー上で必須の戦いは先月号までに決着している。最終回は戦いの後始末、そして数十年後までの後日談が語られたエピローグ編にあたる。長い旅の途中で命を落とした者、最後まで生き延びた者たちが後の世界にどんな影響を与えたか……あまりにネタバレ要素が多いため詳しく語れないが、気になる方は今月号のマガジン本誌かコミックス最終巻を手に取ってみてほしい。

ごくごく一部に消化不良(トゥバン・サノオの立ち位置が最後まで曖昧)は残るものの、各勢力・各キャラクターごとの決着はきちんとついている。無駄な連載引き延ばしも打ち切りもなく、長編漫画の終わり方としてはほぼ理想的といえるだろう。『海皇紀』というタイトルを誰がつけたかも最終話で明らかにしてくれるあたり、作者はサービス精神旺盛だ。

そして気になるのは川原正敏の次回作。私を含めた多くの読者が今度こそ『修羅の門』連載を再開……と期待しただろうが、どうもそうではないらしい。本誌によると「作者は新たに2本のコンテを編集部に出した」という。もし『修羅の門』復活ならこんなことはないはずなので、完全な新作になるのだろう。詳しい情報は来月号の作者インタビューで語られるとのこと。期待しながら9月号の続報を待つとしよう。

ともあれ川原先生、ひとまずはお疲れさまでした!

(※2010年8月追記:翌月の月刊少年マガジンで正式に『修羅の門』新章スタートが告知されました)

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