揺れ動く女の子の繊細な感情を描いた読み切り百合短編集『妹ができました。』

女性同士の恋愛(ガールズラブ)を描いた作品は、「百合」と呼ばれます。今でこそ広く知られるようになり、さまざまな人がカミングアウトするようになりましたが、周囲に打ち明けにくいものでした。

そのため、どこか繊細な感じのするそんな恋愛のような感じがします。そんな女の子たちの恋愛の一部を描いた短編集が、芥文絵先生の『妹ができました。』という作品です。2011年~2014年にかけて「つぼみ」と「ひらり」に掲載された読み切り作品に、描き下ろしが入って一冊の短編集になりました。

本作には、タイトルとなった『妹ができました。』の他、8編が収録されています。

  1. 妹ができました。
  2. 卒業の日
  3. そうして私たちは
  4. 私の好きなあの子のこと(前編)
  5. 私の好きなあの子のこと(後編)
  6. たゆみなく生きよ
  7. 私の愛する河野さん
  8. 姉ができました。

このうち、『姉ができました。』は描き下ろしで、『妹ができました。』の後日談的な位置づけです。

お互いが距離を縮めていく過程、今までと違う感覚に戸惑うさまなど、女の子の感情を緻密に描いています。どの作品も、ゆっくりと時が進行していくような感じで、絵柄も可愛く繊細なタッチで好感が持てます。

キスシーンは一部作品にありますが、性描写はほとんどなく、百合が初めての人や女性でも安心して読める作品です。

【作品データ】
・作者:芥文絵
・出版社:新書館(ウィングス・コミックス)
・刊行状況:既刊6巻