ヒトと亜人の交流を描く『ライラと死にたがりの獣』!

【あらすじ】
幼い頃から人間に飼われてきた亜人・アーロン。人を殺すためだけに育てられたため、外界のことは何も知らない。
持っているものは古い一冊の絵本のみ。
自分の死を願うアーロンは、ライラという少女と出会って変わっていく──。

【みどころ】
人間のような四肢を持ち二足歩行する獣が「亜人」と呼ばれている。
街によっては亜人を忌み嫌ったり、逆に人間を追い出そうとするところもある。
アーロンの飼い主であるウォーグという悪人の命令により、ライラの両親は目の前でアーロンに殺された。

ライラが忌み嫌うアーロンだったが、ライラの容姿はアーロンの持つ絵本に出てくる死の天使に似ているらしい。
かくして、ライラはアーロンに戦い方を教わる代わりに、いつかアーロンを殺すという約束を交わした。

さまざまな街へ旅する二人だったが、ウォーグに狙われているため、かくまってくれた人間を危機にさらしてしまうこともある。
長く同じ場所にと留まれないが、アーロンの持つ絵本の作者を探しに旅を続ける。

中でもせつないエピソードは、マフィアの妾の子であるルカと、人間と亜人のハーフのオルガの強い絆が際立つ2巻。
孤独だった二人が出会い、どのようにして育ったのかを知ると涙が止まらない。
そして訪れる最悪の事態。しかし二人は最期は幸せだったように思う。

アーロンはずっとウォーグに檻の中で飼われていた記憶しかないが、ある時とある施設の光景が頭をよぎる。それは絵本の作者に通じる記憶であり、彼の持つ一番古い記憶だった。
後半から一緒に旅をするようになったトラヴィスとともに旅を続ける二人は、少しずつ核心に近付いていく。
このトラヴィスはライラに一目惚れして何でも世話を焼いてくれる善人だ。

亜人、逃亡、絵本の謎、ウォーグの真実──さまざまな出来事が交錯してこの『ライラと死にたがりの獣』という物語は存在している。
両親の仇で、絶対に自分が殺すと決めたアーロンに対して、ライラに少しずつ芽生え始めた感情。そして何も知らなかったアーロンの成長。
ピュアでまっすぐな二人の旅路を、温かく見守っていただきたい。

【作品データ】
・作者:原作:斯波浅人/作画:斉田えじわ
・出版社:角川書店
・刊行状況:全4巻