明治・大正に生きた女性の悲哀を描いた『明治姉妹と大正遊女 新装版』

2019年4月30日に平成が終わり、令和時代になった現代日本。昭和さえ遠くなった今では、明治や大正時代はもっと遠い昔と思っている人がいても不思議ではないでしょう。

筆者が小さいときに、祖母から「明治・大正は、まだまだ女性の地位が低かった」という話を聞いたことがあります。そのような時代に生きた女性をテーマにした作品が、『重版出来!』でおなじみの松田奈緒子先生が描いた『明治姉妹と大正遊女 新装版』です。

本作は、短編集として2作が掲載されています。

●『雪月花』

『雪月花』は、明治時代の日本を舞台として展開します。

主人公は、裕福な家庭に育った姉の光子と妹の喜久子。姉は質素で学問好き、妹は派手好きで男に愛される、まるで正反対の姉妹です、

しかし、二人にはとある出生の秘密がありました。父親の死後、親戚の叔父によってその秘密を知ることとなり別れ別れになるも、妹が病気になったときに姉は最後を看取ります。

そんな二人の絆を描いた物語です。

●『大門パラダイス』

『大門パラダイス』は、大正時代の吉原遊廓が舞台。主人公は、吉原に売られた後の「紅」こと「りん」という名前の女の子です。

最初はオテンバで良い客がつきそうにありませんでしたが、「仕事を蔑んでも、自分を蔑むな」という言葉を胸に、売れっ子の花魁へと成長していきます。

そんな「紅」の物語です。

2作品を読んで思ったことは、明治・大正時代における女性の地位の低さです。私は、男女同権に近くなった昭和の生まれなので、そこについては本当に想像でしか知りえません。

それでも、強く生き抜こうとした女性がいて、少しでも幸せになろうとした過程を見て、現在の日本が恵まれており、そんな時代に生きている私たちも、ハングリー精神を忘れずにいなければと思いを新たにしました。

昔の日本人を知りたいと思った人におすすめの作品です。

【作品データ】
・作者:松田奈緒子
・出版社:祥伝社
・刊行状況:全1巻