2008年受賞の『岳』石塚真一は当日〆切りのため授賞式は欠席。2011年受賞の『3月のライオン』羽海野チカは、登壇こそなかったものの会場内で授賞式の様子を見守っていた。
いよいよ大賞の発表となり、プレゼンターとして再びヤマザキが登壇。会場に静寂がおりる。「大賞は『銀の匙 Silver Spoon』荒川弘先生です」と発表されると、雄壮なヴァイオリンの音色に誘われて拍手が沸き起こった。
壇上には荒川弘が受賞に際して書き下ろしたイラストが飾られ、荒川本人も壇上に姿を見せた。イラストには「大賞の大きさに振り落とされないよう、これからも精進いたします!ありがとうございました!!」のコメントが添えてある。ヤマザキからプライズを受け取った荒川は、「名誉ある賞をいただいてありがとうございます。選んでいただいた書店さん、出版の方々、アシスタント、何より読んでくれた読者の方々に心から感謝をしたいです」と、感謝の言葉を述べた。
続けて、『銀の匙 Silver Spoon』編集担当の坪内氏に、司会を務めるニッポン放送アナウンサーの吉田氏からいくつかの質問が投げかけられた。
司会:マンガ大賞を受け取っていただいてありがとうございます。
坪内:こんなに大きい賞をいただきまして、こちらこそありがとうございます。
司会:坪内さんは先生に受賞についてどのようにお伝えしましたか?
坪内:ノミネートされたときは心の中で大賞が獲れるといいな、と思いながら平静を装って本人に伝えました。受賞は、すぐに伝えるのではなく、少し寝かして打ち合わせのときにおもむろに伝えてみました。
司会:プロポーズみたいですね(笑) そのとき先生はどんなご様子でしたか?
坪内:「おおっ」という感じで、喜んでらっしゃいました。
司会:〝酪農青春マンガ〟という、今までにあまりなかった作風で作られていますが、どうやって生まれたのですか?
坪内:荒川さんの昔話の中に「農業の経験」というのがあって、これは面白いんじゃないかとお話しました。また、少年サンデーを読んでいる15、6際の少年の一番の関心が、将来のことというアンケート結果が出ていまして、それを荒川さんに話したら「じゃあこういう話を読者にぶつけてみよう」という話から始まりました。
司会:真っ正面から将来の問題に取り組んでいるマンガですよね。
坪内:そうですね。もしかしたらすごく地味かもしれませんが、自分の人生と闘っているマンガなので、そういう意味では王道の少年漫画なのではないかと思いますね。
司会:酪農経験のない人にとっては新鮮な驚きがあるマンガですが、膨大な取材量がつまっているのではないですか?
坪内:荒川さんのご実家がもともと農業なんですよ。農業については特に取材は必要がありませんでしたが、今学校に通っている子供たちの生活の取材には力を入れていますね。取材中、素人の僕が色んな所で驚くことで「農業知らない人はこんなところで驚くのか」と荒川さん感じてもらっています。