2021年9月24日、さいとう・たかを先生が逝去されました。10月25日発売の「ビッグコミック」では追悼特集として、名作「海へ向かうエバ」の再掲載や、ちばてつや先生、秋本治先生らからの追悼色紙が掲載されています。
【本日発売】
画業66年、偉業と貴重なオフショット――
「さいとう・たかを追悼特集」『ゴルゴ13 海へ向かうエバ』アンコール掲載
巨匠コラボ完結編『永井豪版ばるぼら』
新連載第2話『ダンプ・ザ・ヒール』ビッグコミック21号、本日発売!
表紙は #さいとう・たかを 氏!https://t.co/5Apy9Y2mW2 pic.twitter.com/ONBKbYXazK— ビッグコミック編集部 (@bigcomic_mg) October 24, 2021
『ゴルゴ13』、『鬼平犯科帳』、『サバイバル』など数々の名作は多くの人がご存じのはず。「ゴルゴはどうなるの?」と思う人は少なくないでしょうが、連載中の『ゴルゴ13』、『鬼平犯科帳』については、さいとう先生が生存中から構築していた分業体制により、今後も継続するとのことです。さて、今回はご当地漫画紹介の番外編として、『ゴルゴ13』で日本国内が舞台となってる作品を3つ紹介します。
■「呉越同舟」(1993年11月発表、SPコミックス104巻収録、舞台:東京など)
昨今の台中関係はきな臭くなる一方ですが、本作は両国の民間交流団体がシンガポールで対談するシーンから始まります。友好関係を是としない台湾人の守旧派である許大秀がターゲットとなりました。発表から30年近くたって中国共産党の野心が露わになった現在では、許大秀の見方が正しかったと分かるのですけどね。許大秀が日本の東京・江戸川区に住んでいることから、ゴルゴは日本に降り立ちます。成田エクスプレスから狙撃するゴルゴに対して、乗り合わせた乗客は映画の撮影と思いこまされました。その後、錦糸町で列車を降りたゴルゴは早々に日本を離れます。日本滞在は、わずか3時間余りのスピード仕事でした。
■「「“E”工作」(1995年8月発表、SPコミックス116巻収録、舞台:京都など)
太平洋戦争下における諜報活動と戦後の流れを描いた作品。1945年のチリ・サンチャゴから、1995年のスペイン・マドリード、アメリカ・ワシントンを経て、日本の京都が描かれます。ターゲットは戦時下で諜報活動に従事し、戦後は閣僚なども歴任した元政治家の剣持十郎。明確にモデルと思われる人物は思いあたりませんが、複数の人間を組み合わせた可能性がありそうです。五山の送り火を背景に歓談する剣持は戦中の秘密を明かした後、チリから訪れたミゲルの暗殺を避けた…と思ったところでゴルゴに狙撃されます。
ゴルゴが依頼を引き受けた詳しい背景などは本作を読んで欲しいところ。条件付きの依頼を断ることの多いゴルゴながら、「捨てガネになってもいいのだな」と本作では時間的な制約のある依頼を承諾しています。
■「夏の老人」(2008年8月発表、SPコミックス177巻収録、舞台:山形など)
暗殺稼業を請け負うゴルゴですが、毎回ドンパチやっているわけではありません。本作はゴルゴの仕事における裏側を描いた作品の1つです。作品冒頭に登場するのは、日本刀の研ぎ師(とぎし)で“神様”の異名を持つ高柳廣一。山形に在住する彼が何かの部品らしきものを仕上げた後、急死したところから話が展開します。葬儀の後、通帳に記載された大金の動きを異様に感じた高柳の娘は、上京して知人に調査を依頼しました。
そんな娘の元をゴルゴが訪れます。高柳が仕上げた部品を受け取ったゴルゴは、「……これと同じ物は、もう二度と手に入れる事ができない」「……その技術もな……」と思わせぶりなセリフを残して去りました。その後に娘は知人からゴルゴ13のことを知らされるのですが、忘れた方が良いとの判断をしました。まあ、正解ですね。
これら3作の他にも「暗黒海流」「一射一生」「BEST BANK」「消滅海域」「大地動く時」など、ゴルゴシリーズ中における少なからぬ作品で日本全国が舞台となっています。また機会があれば、ぜひ紹介したいですね。
【作品データ】
作者:さいとう・たかを、さいとう・プロダクション
連載:小学館「ビッグコミック」連載中
刊行状況:1~202巻発売中、以下続刊