光秀が信長を裏切った理由とは?『何度、時をくりかえしても 本能寺が燃えるんじゃが!?』

日本史において抜群に人気の高い織田信長。小国の主が天下統一まであと少しとなるものの、家臣の裏切りによって死亡するドラマチックな人生は、いろいろな作品になっているだけでなく、信長自身が女性になったり犬になったり守護神になったりと活躍が著しい。そんな信長を新たな切り口で描いた漫画が講談社「ヤングマガジン」にて連載中の『何度、時をくりかえしても 本能寺が燃えるんじゃが!?』(原作:井出圭亮、作画:藤本ケンシ)だ。

炎に包まれた本能寺で敦盛を舞う信長から始まる本作。忠臣と思い込んでいた光秀の裏切りを信じられない信長が未練たっぷりで死んだ……と思ったところ、一見して熊のぬいぐるみのような神様?から「やりなおしさせてやる」と告げられて7年ほどさかのぼった時代に戻る。つまり本作は信長が死の淵から人生をやり直すタームリープ漫画だ。もちろん信長は戻った先で光秀の裏切りを防ごうとするのだが、あまりの短慮に別の家臣に裏切られるなどして、タイトル通りに何度も本能寺で襲われてしまう。

「信長ってバカなの?」と思いたくなるものの、そこは漫画と考えたい。そんな信長でも失敗を繰り返す中で徐々に生き延びる算段を立てている。直近の生き返りではとうとう本能寺での死を逃れることができたのだが、光秀の軍門に下った島津、毛利、長宗我部、本願寺らに囲まれて、より悪い状況に陥ってしまう。また信長が生き返ることのできるシビアな条件も明らかになったため、安易に死を選べないことも信長は理解させられる。

しかし光秀の真意を探ろうとする信長の眼光は時代の覇者を思わせるものがある。直近の連載では光秀の娘である玉(後の細川ガラシャ)を人質にとった信長は、とうとう光秀とサシで話し合うことに成功する。時代の覇者として意気投合した二人はそのままトントン拍子に和解するかと思いきや、信長のさりげない言動に光秀は激怒する。どうやら光秀を謀反に走らせた根本的な原因は濃姫、つまり信長の奥さんらしき展開が描かれているのだ。

史実における濃姫と明智光秀の関係は不明瞭な部分が多く、2人は縁続きであり光秀が織田家に仕えるきっかけとして濃姫の存在があったとする研究者も少なくない。また、信長と濃姫の夫婦仲は良好だったとされるものの、両者の間に子供が生まれたとの記録は残されておらず、本能寺の変で信長が死んだ後、濃姫がどうなったかもはっきりしていない。現代においても光秀が信長を裏切った真の原因は明らかになっていないが、本作では光秀の心境をどのように描くのか。そして信長は生き延びることができるのか。どちらも楽しみだ。

【作品データ】
原作:井出圭亮、作画:藤本ケンシ
連載:講談社「ヤングマガジン」連載中
刊行状況:1~3巻発売中、以下続刊