全米で2月17日に公開された『借りぐらしのアリエッティ』が、公開2週間(2/17~3/1)で『崖の上のポニョ』の興行収入を上回った。
スタジオ・ジブリの作品は、過去公開のものも合わせて米国での評価が高い。にも関わらず、これまで劇場興収はそれほど伸びを見せなかった。その原因の一つとして、スクリーン数の少なさが挙げられている。
米国で劇場興収のトップ10に入るのは、いずれも公開初日から2000スクリーン以上の作品だと言われている。それに引き替えジブリ作品は、米国アカデミー賞受賞作の『千と千尋の神隠し』でさえも、700スクリーンと控えめで、興収も1000万ドルにとどまった。過去に最も劇場興収を伸ばした『崖の上のポニョ』は、900スクリーンと公開数を増やし、およそ1500万ドルを記録した。さらに『借りぐらしのアリエッティ』は過去最大規模の1200スクリーンでの初公開となり、スクリーン数と売り上げが無関係でないことを明らかにした。しかし、外国の映画で興収が1000万ドルを突破することの珍しい米国で、ここまでの結果を残してきたことは、ひとえにジブリ・ブランドの成せるわざと言えるだろう。
本作は宮崎駿監督作品ではないものの、米国のジブリファンから強い関心を寄られている。米国でも知られた児童文学『床下の小人たち』(英国:メアリー・ノートン作)を原作としていることが、馴染みやすさを呼んでいるのだろう。
また、声優陣に人気俳優を起用するなど、米国でジブリ作品のマーケティングを手がけるウォルト・ディズニーが、本作に強い関心を示していることがうかがえる。少年の名前を「翔」から「ショーン」に変えるなど、米国で受け入れやすいようローカライズドにも力を入れているようだ。
英題『The Secret World Of Arrietty』にも、センスの良さを感じる。日本語と英語にはどこか越えられない壁があり、しっくりこない表現も多い。しかし、本作の表題には感銘を受けた。耳で聞く「借りぐらし」という言葉の不思議な響きと、言葉の持つ深みを「The secret world」としたのには恐れ入る。名付け親の真意はとにかく、筆者は両言語の狭間にある、それぞれの想いを勝手に想像しようと思う。
日本人の心に映るジブリ作品たる美しさが、彼の地でも美しく広がることを願っている。
【関連URL】
・『The SecretWorld Of Arrietty』Disney official site
(『借りぐらしのアリエッティ』ディズニー公式サイト)
http://disney.go.com/arrietty/