牙の旅商人 1 (ヤングガンガンコミックス)

荒野をさすらう復讐少年の冒険譚『牙の旅商人 ~The Arms Peddler~』

牙の旅商人 1 (ヤングガンガンコミックス) 【あらすじ】
こことは違う荒廃した世界。暴力のはびこる荒野で少年・ソーナは、無法者たちの手で愛する家族を皆殺しにされた。ソーナ自身ものたれ死ぬ寸前になった時、謎の美女が偶然通りかかる。美女はこの世界で独特な地位をもつ「武器商人」、名をガラミィと言った。生き延びて戦うか、あきらめてこのまま死ぬか――そう問われたソーナは家族の仇を討つため、生きて戦うことを選択する。こうして奇妙な美女とともに、荒野を行く少年の旅路がはじまった……。

【みどころ】
『ジーザス』『ARMS』などで硬派な漫画でヒットを飛ばした七月鏡一が原作者をつとめる最新作。

『北斗の拳』を思い出させる世紀末ヒャッハーな世界観に、埋もれた文明(どうやら我々の世界が滅んだ後らしい描写がある)、遺跡から発掘されるマシンガンやライフルなどのロストテクノロジー、クールで凶暴な美女、成長の可能性を秘めた少年主人公――なんというか設定からして、よい意味でこってり風味の「王道冒険マンガ」である。

ほぼ『北斗』の世界で、ケンシロウが銃器で武装したグラマー美女になったとイメージしてもらえれば分かりやすいかもしれない。敵は人間だけに限らずゾンビから幻想の獣まで登場し、その意味では『ベルセルク』のようなファンタジー要素も含んでいる。

この作中で「武器商人」とは店で武器を売るだけの人間を指すのではなく、ギルド(同業者の集まり)を組織して遺跡から武器を掘り出し、使えるように整備し、依頼があれば武器を馬車に積んで危険な地域まで届けにいくこともある、かなり特殊な職業だと設定されている。ガラミィはその中でも特に腕利きで、どんな銃器でも手足のように使いこなして依頼を妨害する者どもをなぎ倒していく。しかも何らかの「目的」を果たすため旅しているらしく、たんなる主人公の師匠的ポジションにとどまらない奥深いキャラクターだ。

実のところぶっちゃけてしまえば、単行本3巻の段階でストーリー本筋はさほど進行していない。ソーナ君の仇敵もプロローグで登場したきりだ。だが代わりに冒険とバトルはてんこ盛り。奴隷市場で売られてしまったり、亡国のかわいい姫様を救出したり、同行者のガラミィが放任主義(というかドン引くほど極度のスパルタ)なため、未熟なソーナも容赦なく苦境に放り込まれていく。それゆえ冒険の密度が濃く、ぎりぎり生還しながら心身ともに逞しくなっていくソーナの成長ぶりは読んでいてワクワクする。

あらゆる意味で王道を突き詰め、だからこそストレートにおもしろい。変にヒネりすぎた微妙な漫画が増えてきた昨今、これからに期待したいエネルギッシュな注目作である。

【作品データ】
・原作/作画:七月鏡一/梟
・出版社:スクウェア・エニックス
・刊行状況:4巻まで(続刊)

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