魔王 10―JUVENILE REMIX (少年サンデーコミックス)

緊迫の良作サスペンス『魔王 JUVENILE REMIX』

魔王 10―JUVENILE REMIX (少年サンデーコミックス) 【あらすじ】
治安が極度に悪化した地方都市・猫田市。そこでは民間の自警集団「グラスホッパー」が治安維持のため活動し、指導者の美青年・犬養が市民のカリスマとなっていた。弟と猫田市に暮らす安藤はごく目立たない高校生だったが、あるとき犬養と部下たちによる行き過ぎな粛正劇を目撃。カリスマ指導者の犬養が本当はとんでもない怪物――魔王ではないかと疑いはじめる。何も見なかったことにして普通の生活に戻ることもできたが、安藤の選んだ選択は“犬養との対決”。己の思考力とちっぽけな特技だけを武器に、孤独な戦いに挑む。

【みどころ】
実力派小説家、伊坂幸太郎の『魔王』をコミカライズした作品。掲載誌の少年サンデー読者に合わせてか、主人公の年齢を会社員から高校生に下げたり、エスパー的なキャラたちの能力バトルを描いたり、よりエンターテイメント色が強く仕上がっている。

ストーリーはあらすじ欄でも書いたように、犬養と安藤との対峙がメイン。大物vs一般人というワクワクする設定だ。街で市民から喝采をあびたり、テレビで政治家を論破するなど犬養の実力と人気は圧倒的。対する安藤は単なる子供でなんの権力もない。ただ彼には、幼いころから「自分が考えた言葉を他人に強制的にしゃべらせる」という特殊能力、通称“腹話術”があった(この作品世界には特殊能力をもつ者が少数いるという設定)。

運命論者の犬養は安藤を「自分を止めるかもしれない特別な者」と見ているふしがあり、接点がないはずの両者はことあるごとに出会って言葉をかわす。そんなカリスマの姿を見かねた犬養のシンパには安藤を危険視する者もいて、より危険な能力者に安藤はたびたび命を狙われることになる。これだけで日常→スリル→アクションの魅力性は十分で、その構成バランスも絶妙だ。

いくつもの危険を「腹話術」と機転で切り抜け、安藤は犬養の本性を暴くことができるのか? そしてもしも安藤が敗北した場合、その意志を継ぐ者はいるのか……? 作画担当者・大須賀めぐみの大胆なアレンジが功を奏し、わずか10巻の間に濃厚なドラマが展開される。正直これをサンデー連載時にリアルタイムで読んでいたころは数ある掲載作の一つとしか見ていなかったが、コミックでまとめて読み返すと印象は180度ひっくりかえった。手軽に読めるボリュームなので、隠れた良作を求めている人はぜひ手にとってみてほしい。

【作品データ】
・原作/作画:伊坂幸太郎/大須賀めぐみ
・出版社:小学館
・刊行状況:全10巻(完結)

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