【あらすじ】
21世紀初頭、地殻変動と核による汚染で多大な被害を受けた地球が舞台。その混乱の世の中で突然現れた怪物の襲撃で、人類は存亡の危機に面していた。そんなとき学園に入学してきた葉隠 覚悟は、普段こそ物静かな少年だが、ひとたび怪物が現れると漆黒の鎧・零(ゼロ)を纏って戦う“人類の守護者”だった。因縁浅からぬ怪物たちと、傷だらけになりながらバトルを繰り広げる覚悟がたどり着く場所は……?
【クールで熱い男、覚悟】
主人公である覚悟は大人しい印象の少年です。しかし、彼は戦時中に生み出された殺戮兵器を相手に一歩も退かず、変身ヒーローのような鎧(強化外骨格・零)と無敵の格闘術を用いて巨大な怪物たちに真っ向から立ち向かいます。それだけ聞くと意外とどこにでもいるヒーロー像ではありますが、彼の場合は熱血漫画家・島本和彦の作品にすら匹敵するほどの熱いハートを持っています。
そのキャラクターをよく表しているのは、戦闘時に彼が発する数々の名言でしょう。「その言葉、宣戦布告と判断する。当方に迎撃の用意あり!」「覚悟完了」――こうして構えた彼は、常に血まみれになりながらも勝利し、ボロボロの肉体を級友に心配されても「問題ない」と無表情に答えて戦いを終える。そんな男なのです。
【最強の敵、散(はらら)】
覚悟の兄にして怪物軍団のボス・散は美しい容貌を持った少年です。しかしその技は幼い日でも鯨を指一つで爆発させ、圧倒的なカリスマにより怪物を統制する最強の暴君でもあります。彼ら超人同士の戦いに巻き込まれる覚悟の級友たちを「たかが雑草」とさげすむ散に対し、覚悟は「雑草などという草はない」と立ち向かいます。ある理由から人類を激しく憎悪する“人類の殲滅者”の兄、あくまで人のやさしさを信じる“人類の守護者”の弟。この両者の対立がストーリーを大いに盛り上げていきます。
【どこまで本気なのか? いや全部本気なのだ!】
本作に出てくるキャラクターはみんな異常なほど胆力が据わっていて、内臓を口からはき出しながらも平然と戦ったり、致命傷になる攻撃を受けても笑いながら戦いを継続します。『北斗の拳』を更にハードにしたような内容と言えば良いのでしょうか。広い漫画界でも鬼才・山口貴由にしか描けない迫力、セリフ回し、怒濤の勢い、そのどれもが今なおコアなファンを惹きつけ、バイオレンスアクションの金字塔として語り継がれています。
なお、現在チャンピオンREDで連載中の『エグゾスカル零』は主人公の名前をはじめ共通点が多く、実質的な続編と見られています。ただしダークな時代劇『シグルイ』を描いた時の影響からか、まっすぐな勧善懲悪作品ではありません。まだ一連の山口作品に馴染んでいない人は本作『覚悟のススメ』から読みはじめ、難しいことは考えずその熱い王道ヒーロー展開に心を躍らせてほしいと思います。
【作品データ】
・作者 :山口貴由
・出版社 :秋田書店
・刊行状況:全10巻(完結)