エンバーミング-THE ANOTHER TALE OF FRANKENSTEIN- 1 (ジャンプコミックス)

『るろうに剣心』の対極にある「死」の物語――『エンバーミング-THE ANOTHER TALE OF FRANKENSTEIN-』

エンバーミング-THE ANOTHER TALE OF FRANKENSTEIN- 1 (ジャンプコミックス) 【あらすじ】
『人造人間』……。かつて、異能の天才・ヴィクトール・フランケンシュタインが、造物主である神の御業を真似て、人間の死体より造り出した「人ならざるモノ」である。その製法が人々の前から失われても、異能を持つ化外の存在に魅せられる者は、後を絶たない。この物語は、数奇な宿命に操られた人造人間と、それに関わる者たちの物語である。

【みどころ】
実写映画化、アニメ化15周年企画に続き、2012年6月には新シリーズ始動が発表された『るろうに剣心』。その作者、和月伸宏の最新作『エンバーミング-THE ANOTHER TALE OF FRANKENSTEIN-』(ジャンプSQ連載中)を、今回は紹介します。

本作は、死体蘇生の秘術で甦った人造人間(フランケンシュタイン)たちと、それを生み出した者の物語。不殺(ころさず)の剣客が活躍する『るろうに剣心』が「生」を描いたのに対し、こちらは「死」をモチーフに扱った真逆の作品です。

『るろうに剣心』同様、魅力的なキャラクター造形、メリハリのきいた端正な絵柄などのビジュアル的長所は相変わらず感じられるものの、凝った伏線、洗練された演出、深い物語性など、大人の読者を惹きつける力は、本作からのほうが強く感じられると思います。

たとえば、
「人造人間に進んで関わるのは、悪人か狂人のどちらかだけ」―――。
本編で何度も繰り返されるこの台詞通り、登場人物も、記憶喪失の人造人間・ジョン・ドゥや、人造人間殺しの人造人間・ヒューリー・フラットライナー、美貌のはぐれ女医やさぐれ派・Dr.ピーベリーなど、いずれ劣らぬ曲者揃い。生前の人間味をどこかに残しつつ、人外級の耐久力と戦闘力を持った彼らが、それぞれ異なる理由から繰り広げる壮絶な死闘は、少年誌ならではのテンポの良さで読ませます。

そして、運命のいたずらで人ならぬ者となってしまった人造人間が、時折見せる狂気と業のすさまじさ、生々しい流血シーンこそ、作品の肝の一つ。「死」という停止した世界で、勝者も敗者もなく戦い続ける彼らの姿は、今を生きる読者に「命の意味」を訴えかけてくるようです。とはいえ、物語には、キャラクター同士のたわいないボケツッコミなど、お笑い要素もあちこちに仕込まれているので、あまり重苦しい気分になることもなく、一気に読めるはずです。

そう、本作の魅力は「死」という変化球的なアプローチで、娯楽に徹した作品を作りたい、という作者側の創作欲。「『るろうに剣心』しかこの作者の漫画は読んだことがない」という方にも、ぜひ読んでいただきたい作品です。

【作品データ】
・作者:和月伸宏
・出版社 :集英社
・刊行状況:6巻(続刊)

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