【あらすじ】
気弱な小学生・才賀勝は、ある日いきなり親から莫大な遺産を受け継がされ、裏世界の住人に狙われる立場となる。唯一の味方だった祖父の「困ったことがあればしろがねに頼れ」という不可解な言葉を信じて逃亡を続けるなか、ついに勝は追い詰められ絶体絶命のピンチに。そこへ颯爽と現われたのは人形使いの美女・しろがね、そして拳法使いのお節介青年・加藤。演じ手たちがステージに揃った時、壮大な運命の“からくり”を解くための“サーカス”がはじまる……。
【みどころ】
大ヒットを飛ばした王道少年漫画『うしおととら』の後に連載を開始した『からくりサーカス』。ヒット直後に鳴かず飛ばず……なんて作家も多い中、藤田先生は期待を裏切らずすばらしい冒険譚を見せてくれました。
物語の中心になるのは、数奇な運命を背負わされた主人公・勝くん。強烈なパワーをもった操り人形を使う悪党、そして謎の仕組みで動き、思考や会話もできるバケモノ人形「自動人形(オートマータ)」たちに狙われ続けます。そんな強敵に対して、これまた超強力な人形を操る守り手が、しろがねという銀髪の美女。彼女の生い立ちや勝を一途に守る理由なども、ストーリーが進むにつれて少しずつ明かされます。
一方、もうひとりの主人公が中国拳法使いの青年・加藤。「他人を笑わせないと自分が死ぬ」という奇病にかかっている不幸な男ですが、生来のお節介癖から街で襲われている勝を助けに入り、しろがねとともに巨大な戦いへ巻き込まれていきます。彼にとってしろがねは勝に盲従する変な女な反面、同時に心惹かれる異性という複雑な心境も。やがて勝たちと別行動をとることになった加藤はオートマータ相手に世界各地を転戦しながら、これまた彼なりに核心へと迫っていきます。
加藤と別れ、しろがねとともにサーカス団に加わった勝。いろいろな人と関わるうちに冷徹な仮面を外し、魅力的な女性になっていくしろがね。死線をくぐるうちに怒れる悪魔へと変わっていく加藤。サーカス団の陽気な仲間や謎の人形使い、殺し屋、あげくは数百年前の錬金術師まで……この作品に登場するパーツ(人物と概念)に無駄はいっさいありません。
操り人形と自動人形、からくりとサーカス、人形使いと拳法使い、西洋錬金術と東洋武術、善意と悪意、愛情と憎悪。あらゆるパーツが40巻を超える長編ストーリーの中で複雑に絡み合い、やがて世界を揺るがす陰謀の「黒幕」に迫っていく様子は圧巻です! さらに自動人形vs近代兵器、操り人形vs中国拳法などなど、読む者すべてを圧倒する藤田アクションも当然健在。少年漫画のエッセンスがこれでもかというほどパンパンに詰まった、誰にでもお勧めできる超スペクタクル大作なのです。
【作品データ】
・作者 :藤田和日郎
・出版社 :小学館
・刊行状況:全43巻(完結)