聖闘士星矢THE LOST CANVAS 冥王神話 外伝 1 (少年チャンピオン・コミックス)

【集中連載】『聖闘士星矢』 ― 宇宙イヤーに添えて ― 第3回

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聖闘士星矢THE LOST CANVAS 冥王神話 外伝 1 (少年チャンピオン・コミックス) ■『聖闘士星矢』は新たなステージへ
少年ジャンプで『聖闘士星矢』の本編が終わって13年が経過した頃、今度は秋田書店で「『聖闘士星矢』の新作誕生」の報が流れました。その当時、作者である車田氏は集英社で同じく鎧モノである『SILENT KNIGHT翔』の短い連載を終え、角川書店で亜流の鎧モノ『B’T-X』も終了させていました。「また車田氏の描く星矢が見られる!」という読者の喜びとは裏腹に、なんと新作『聖闘士星矢 エピソードG』は秋田書店で別の漫画家(岡田芽武氏)によって描かれるという驚きの展開でスタートしたのです。

■『聖闘士星矢 エピソードG』…その物語
物語は本編の数年前、獅子座の聖闘士アイオリアを主役としてスタートします。彼の兄は聖闘士の本拠地である聖域(サンクチュアリ)で裏切り者として死んでおり、裏切り者の弟という烙印を背負いながら大神クロノスの眷属、ティターン神族と戦うことになるというストーリーでした。

■原作ファンも満足の新作!
全く異なる絵柄、前日談というストーリー、集英社ではない舞台、全てが前代未聞のスタートでありながら、『~エピソードG』は原作の最高峰である聖闘士、黄金聖闘士を話の中心において、強くオリジナルの『聖闘士星矢』を感じさせる物語となりました。

原作内では物語の性質上、敵役としてのみ登場した黄金聖闘士もいます。黄金聖闘士といえど全てが崇高な人格者ではなく、ハッキリいえば「かっこ悪い」黄金聖闘士も存在しました。崇高さの欠片もない黄金聖闘士が今更出てきてもなぁ……という不安に対し、岡田氏が出した結論は「全てがかっこいい黄金聖闘士」の物語だったのです。

■かっこよすぎる黄金聖闘士
先に語ったように原作の「かっこ悪い黄金聖闘士」は主人公の星矢たちを引き立たせる敵役として登場している性質上、仕方なく存在しました。格下の青銅聖闘士が神にも等しい黄金聖闘士に勝つ、そのカタルシスのためです。

一方で新作『エピソードG』は黄金聖闘士を主役に据えているため、原典における残虐な性格すらもダークヒーローとして処理し、さらなる悪と戦う物語として人気を得ました。残念なことに掲載誌がチャンピオンREDという比較的マイナーな雑誌であることと、2009年から2011年まで長期休載していたため、決して知名度は高くはありません。むしろ現在は週刊少年チャンピオンに連載された『冥王神話シリーズ』の方がアニメ化されたこともあり、高い知名度を持っています。ですが、黄金聖闘士のための物語であるため、原作でたまった鬱憤を晴らしてくれる爽快な物語となっているのも事実。ぜひ『聖闘士星矢 エピソードG』は一読して頂きたいと作品です。

さて、岡田芽武版の『エピソードG』はここまでとして、次回は『冥王神話シリーズ』について語ります。

■作品データ
・絵/原作 :岡田芽武/車田正美
・出版社 :秋田書店
・刊行状況:17巻(続刊)

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