プロ予備軍の選手達の年齢層は若年化している。夏の風物詩である甲子園を目指す球児達は、強豪校になるほど、中学野球部ではなくシニア出身者の割合いが多いのはもはや常識だ。
いわば甲子園を目指すための高い道のりは、もはや小学校時代から敷かれているといっても過言ではない。そんな“野球エリート達”に交じり、独学で腕を磨いた主人公・石浜文吾の中学時代(シニア)を描いた熱血野球漫画が『BUNGO』だ。
もともと友達が少なく、ひたすら壁当てで投球練習していた石浜は、同世代の日本代表選手である野田幸雄に出会い運命は動き始める。ライバルである野田を追いかけて、名門である「静央シニア」の門をたたく。そこで周囲を驚かすほどの成長を見せた石浜は、チームメイトと切磋琢磨しながら、強豪との激闘を繰り広げる様が描かれている。
本作の魅力は、そのリアルさだろう。甲子園という一握りの選手しか立つことの許されない舞台への道程は果たしなく遠い。そこには、家庭の事情や金銭的な問題、強豪高校のスカウト網など、通常ではなかなか知り得ない舞台裏まで丁寧な取材のもと落とし込まれている。更にマウンドやバッターの鼓動や思考などは、一瞬の攻防が未来へと繋がっているということを読者に想像させる。“中学生ながら”という表現は誤解を招くからもしれないが、そういっても違和感がないほどの本格的な野球漫画であることは間違いない。
補足を加えると、今や球界のスーパースターとなった大谷翔平選手も、リトルリーグ、シニアリーグで腕を磨いた過去がある。唯一注文をつけるとすれば、丹念に描いている故の物語の進行の遅さだろうか。毎号毎号、続きを気にしつつも翌週を待つ日々である。
【作品情報】
・作者:二宮裕次
・出版社:集英社
・刊行状況:6巻まで(続刊)