3月29日、「マンガ大賞2016」の授賞式が開催。今年の栄えある大賞に野田サトルさん作の『ゴールデンカムイ』が選ばれた。
「マンガ大賞」は、各界のマンガ好きが面白い、誰かにすすめたいマンガ作品を選ぶ賞。選考対象となるのは、2015年1月1日から12月31日までに単行本が出版され、なおかつ最大巻数8巻までの作品。第一次選考でノミネート作品が決定し、さらに選考員が全ノミネート作品を読んだ上で、上位3作品を選考。集計して、その年の大賞作品が決定する。
今年、大賞作品のプレゼンターとして登場したのは、昨年の受賞作『かくかくしかじか』作者の東村アキコさん。
『マンガ大賞』ノミネート常連であったところ、昨年ついに受賞した東村さん。その反響はやはり大きかったようで「同級生や、高校、大学のときの恩師から、久しぶりに連絡が来て『マンガ大賞とったね。すごいね』とお祝いの言葉をいただいた。今まで自分がマンガを描いてきて、一番リアクションがすごく、この賞の注目度が上がっているんだとと実感しました」とコメント。
また、東村さんの知り合いで『かくかくしかじか』の受賞をきっかけに、大人になってやめてしまっていたマンガの読書を復活した人たちが非常に多かったそうで、「私のマンガだけでなく、ノミネート全作品が、マンガから離れ気味な人をもう一度引き戻している感じがして、本当に素晴らしい賞だと思っています」と昨年の受賞で感じた手応えを語った。
そして、自身の作品『東京タラレバ娘』もノミネートということで「ドキドキしていますね」と語りつつ、東村さんから発表された作品名は『ゴールデンカムイ』。
現在、「ヤングジャンプ」(集英社)で連載中の『ゴールデンカムイ』は、北海道を舞台に日露戦争の帰還兵・杉元がアイヌの金塊を探し、冒険を繰り広げる物語。
受賞発表を受けて壇上に上がった作者の野田サトルさんは、作品が生まれた背景について、まず、主人公の名前である“杉元佐一”が自身の曽祖父の名であり、また曽祖父が日露戦争に参加した屯田兵であったことを明かした。曽祖父の話をいつか描きたいと思っていたところに、担当編集の大熊氏が持ってきた北海道を舞台にした狩猟の小説が面白かったことから、「この2つをくっつけちゃえばいい」と、『ゴールデンカムイ』が始まったという。
冒険、狩猟、グルメといったさまざまな要素が織り込まれた『ゴールデンカムイ』を描くにあたって、徹底した取材を行ったという野田氏。「猟師さんについていって、鹿を撃ち、脳みそを生で食べさせてもらいました」という驚きのエピソードを披露。脳みその味については「味のないグミみたいな味」だったとのこと。
野田氏に続いて、ステージにあがった担当編集の大熊八甲氏。
『ゴールデンカムイ』の面白さは、大熊氏いわく「和風闇鍋ウエスタン」だそうで、“ウェスタン”は、かつて映画で人気だった「マカロニウエスタン」(イタリア発の西部劇)のような切った、はった、格好いいエンタテイメントというところ。さらに「グルメ、文化、冒険、サバイバル、歴史といった、男の子、女の子、老若男女が大好きであろうものをぶっ込んで、何が出てくるかわからない部分が闇鍋」と、作品の濃厚かつ重厚な魅力について語った。
まだまだ連載が続く『ゴールデンカムイ』。「これから季節が変わると、食べられるものも変わってくる」(野田氏)「4月7日発売のヤングジャンプで、春になって春の野菜を食べてます」(大熊氏)など、さらなる展開を暗示するコメントも飛び出し、なおかつこの作品は何マンガ?という質問に野田氏が「恋愛マンガ」ときっぱり答えたのが印象的だった。
これは、今後の『ゴールデンカムイ』にグルメ、そして恋など、さまざまな要素が盛り込まれた展開が期待できそうだ。