作成者別アーカイブ: 烏丸 桂

アウトローから普通の女子へ――『百日紅』(アニメ映画版)レビュー

2015年5月9日『百日紅』がアニメ映画化された。

原作は江戸風俗家・文筆家でもあり、漫画家でもある故・杉浦日向子の代表作である。浮世絵師・葛飾北斎と娘・お栄、居候の善次郎(渓斎英泉)らを中心に絵師、花魁、男娼、妖怪などさまざまな人物群像が描かれており、娯楽漫画のクオリティとともに、江戸風俗の資料としても価値が高い。

本作を読んで江戸という時代の息遣いに触れたような気になり、江戸時代の研究や創作を志す人も多いのではないかと思う。ちなみに本作は1980年代に『漫画サンデー』に連載され、現在はちくま文庫から上下巻が発売されている。

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日本文学とゾンビ活劇、奇跡の融合!『こころ・オブ・ザ・デッド~スーパー漱石大戦~』

文豪・夏目漱石の代表作『こころ』。海外向けに翻訳もされており、英語版はAmazon.comのレビューでは平均4.5以上を取るなど、日本が世界に誇る国民的文学でもある。

その『こころ』が漱石没後100年に当たる2016年、超ド級アクション+ラブコメ漫画『こころ・オブ・ザ・デッド~スーパー漱石大戦~』として甦った。敵は日本中に溢れ返るゾンビ軍団である。何を言っているかわからないと思うが、まあ聞いてほしい。 続きを読む

現代社会で働く男が魅せる、生の喜び 『めしぬま。』

過労死、長時間残業、ブラック企業、低賃金、非正規雇用の増大など、現代日本社会のサラリーマンを取り巻く要素は相変わらず暗い。しかし彼らが毎日、癒しもなく、もくもくとストイックに働いているわけではない。その癒しの一例が食事だ。

『孤独のグルメ』(久住 昌之・谷口 ジロー/扶桑社)の一節に「誰にも邪魔されず、気を使わずものを食べるという(中略)行為こそが現代人に平等に与えられた、最高の『癒し』といえる」という至言がある。つまり、現代日本のサラリーマンが仕事の合間にとる食事は、単なる栄養摂取以上の大きな意義を持っているといえよう。

そんな人々のニーズに応えるかのごとく、漫画の定番的な題材にも「食事×社会人」という組み合わせがある。その中で話題になっている作品が『めしぬま。』だ。 続きを読む

したたかなヒロインの活躍が熱い!『辺獄のシュヴェスタ』

保育制度の不十分さ、非正規雇用の増加、医療・福祉制度の改悪など、現代日本女性にとっても明るい要素に乏しい昨今。そんな中、漫画の世界では、実際の歴史上で戦った強い女主人公たちが人気を集めている。

復讐の女戦士と西夏文字を題材とした『シュトヘル』のシュトヘル、月刊アクション(双葉社)で連載中の『乙女戦争』のシャールカなど、現代より女性の地位が低かった時代において、細い体に勇気と異能を宿して信念を貫く女主人公たちの姿は魅力的だ。

『月刊!スピリッツ』(小学館)に連載中の『辺獄のシュヴェスタ』もそんなマッシブなヒロインの活躍が堪能できる作品だ。 続きを読む

変わりゆくもの、変わらないもの『かぶき伊左』

【あらすじ】
時は幕末。芝居小屋の看板役者・市村伊左衛門(いちむら・いざえもん)は、その若さと才能で歌舞伎界の寵児に上り詰めていく。しかし江戸から明治に移り変わる中で、芝居の形も変化を遂げていき、伊佐衛門や彼を取り巻く人々も時代の波に飲み込まれようとしていた。江戸幕府によって悪所と罵られ蔑まれてきた歌舞伎は新時代の芝居を作れるのか? そして伊左衛門は一人前の役者として大成できるのか? 続きを読む

宇宙を舞台に害虫駆除『テラフォーマーズ』

【あらすじ】
西暦2599年。火星のテラフォーミングが進行し、その地表は一面の苔とある生物で覆われていた。そして地球からは選ばれし若者達が有人宇宙船『バグズ2号』に搭乗し火星へと向かう。それが予想外の進化を遂げたある生物と人類の長い戦いの始まりだった。 続きを読む

『愛がなくても喰ってゆけます』に見る現代女性の幸せ

【あらすじ】
「仕事と寝ている間以外の時間は食べ物のことを考えている、仕事によっては仕事中も食べ物のことを考えている」と豪語してはばからない漫画家・「YながFみ」。あくまでも架空の(?)主人公である彼女が、都内に実在する名店から隠れ家的な穴場までを紹介する食通エッセイ。東京で美味いものが食べたい人にはおススメの一冊。 続きを読む

「きれいごと」として描かれぬ医者の姿『ブラックジャックによろしく』

【あらすじ】
「医者って一体、なんなんだ?」超一流といわれる永禄大学附属病院の研修医・斉藤英二郎の月収は、わずか3万8千円。同大学医学部を卒業して3カ月、初めて患者を受け持った斉藤は、その理想とかけ離れた日本の医療が持つ現実に葛藤しつつも、一人前の医師として成長していく。 続きを読む

日本が誇る漫画文化の厳しい現実? 『重版出来!』

【あらすじ】
重版。それは出版業界に身を置く者なら誰もが好きな言葉である。重版がかかれば著者には印税が振り込まれ、出版社と書店の利益も伸びる。この漫画は雑誌『バイブス』の編集部を舞台に、漫画家、編集者、営業、宣伝、製版、印刷、デザイナー、取次、書店員など「重版」を望んで奔走するすべての人々への熱きエールである。 続きを読む

「虚実の皮膜」を描いて空前の大ヒット『るろうに剣心』映画版


昨年から今年にかけて、『寄生獣』『美少女戦士セーラームーン』など1990年代にヒットした名作コミックのアニメ・実写化が相次いでいる。そんな中にあって、ひときわ大きなトピックの一つと言えるのが『るろうに剣心』実写版映画の大ヒットだろう。 続きを読む