愛おしく切ない音楽を『弱虫リザウンド』からお届け!

【あらすじ】
大学生の林田律(はやしだ・りつ)は、人気動画サイトへの自作楽曲を投稿するのが趣味の、おとなしめの男子。いわゆる「ボカロP」というやつだ。同じ趣味を持つ同志が集う大学のサークル「UPPER(アッパー)」には、個性的で実力派な面々が揃う。そんな中でも律は、少ない再生数やコメントに喜んでいた。ところがある日、付き合いのカラオケで同級生の姫野響花(ひめの・きょうか)の歌声を聴き、一目惚れ……ならぬ、一聴き惚れ(?)してしまう。ぜひとも自分の作った曲を歌って欲しいと律は望むが──?

【みどころ】
「UPPER」のメンバーが明るく個性派揃いなのが、この切ない系ストーリーを盛り立てている。しかし「スマイル動画」に律がアップするのは、動画のない音楽だけ。それでも数少ない賛同者はいて、好感度の高いコメントも寄せられていた。

ある日、付き合いで行ったカラオケで、同学科の同級生の姫野の声に心奪われてしまい、普段はおとなしく控えめな律らしからず、強引に歌ってもらうことになる経緯は、なんだか見ていて微笑ましい。律から「僕の歌姫になってくれませんか」という恥ずかしい告白を受け、初めは戸惑いながらも、次第に歌い手としての興味に目覚めていく姫野。初めて姫野に歌ってもらった律の楽曲は、驚くべき再生数とコメントを見せた。

しかし現実はそう甘くはない。「前の方が良かった」程度ならまだしも、「どこがいいのかわからない」などの中傷コメントも混ざってくるようになる。律はそれを姫野に知られないようにするため奔走するが、「UPPER」のリーダーである水城に相談することで、事態は思わぬ方向へと転がっていく……。

「スマイル動画」の元ネタや「ボカロP」など、ある程度知っている人は既に多いだろう。だからこそ成り立つこのマンガだが、それをまったく知らなかった姫野に興味を持たせる程に、音楽に熱い律の気持ちが涙を誘う。姫野を傷つけたくないあまり、たくさんの傷を自分一人で背負ってしまうが、そこから救ってくれたのはやはりサークルの仲間だった。

音楽の偉大さや歌うことや創ることの楽しさ、友情や愛情など、巧みな表現で魅了する『弱虫リザウンド』は、webマンガからの単行本化作品だ。Web作品ならではのテーマを繊細に描いたこのコミックは、大切な仲間と読み回したい魅力がある。

【作品データ】
・作者:夜宵草
・出版社:アルファポリス
・刊行状況:全1巻