本を愛する書店員たちの物語~『本屋の森のあかり』


【あらすじ】
須王堂書店の書店員・高野あかりは、生まれ育った故郷を離れて東京の大型店舗で働くことになった。都会の大きな書店での四苦八苦しながらも書店員として奮闘するあかりだったが…

【みどころ】
電子書籍が普及したここ数年ですが、日本はアメリカなどに比べ、それが定着するのに少し時間がかかった印象があります。その理由は、まず書店の多さ。そして、もう一つ考えられるのが、日本で本や書店が多くの人に愛されていることではないでしょうか。今回、ご紹介する『本屋の森のあかり』(磯谷友紀)は、書店を舞台に本を愛する人たちを描いた物語です。

故郷を離れて大型書店で働くことになった書店員の高野あかり。悪戦苦闘しながら、彼女は様々な人たちと本に出会いますが、小説や詩、童話や冒険ものなど、本の中にある言葉がときにあかりを導き、そして、あかりを人とつなげていきます。そのおかげで、あかりは本を読む楽しさと書店員という仕事のやりがいに目覚めていくのです。

書店には出会いがあります。本屋で心惹かれるタイトルを目にして、思わず手にとる経験は多くの人があるのではと思いますが、それは、まだ見ぬ自分を幸せにする言葉に会えるかもしれない…という希望が生まれる瞬間です。『本屋の森のあかり』の中で、あかりは書店を「森みたい」と感じていますが、無数の本が並ぶ大型書店は、まさにたくさんの希望の言葉が眠る魔法の森のような場所といってよいでしょう。

本の中にある短い言葉が、人の心を照らし、人生の指針になることがあります。電子書籍も便利なツールですが、紙の本には、手にしたときの重たさ、ページをめくる音、装丁の美しさなど、捨てがたい魅力があり、それらは言葉との出会いを宝物にしてくれる、まさに人生の装丁のようなもの。この魅力にあふれた本が示す希望が光るからこそ、人々は書店を愛して足を運び、書店員たちも本を多くの人たちに届けようとするのです。

あかりが働く須王堂書店には、魅力的なスタッフがそろっています。クールな美形で、あかりをバカにしつつも少しずつ心を開いてく加納緑。しっかりしていて姉御肌の主任・佐古栞。コミック部門を仕切る凄腕アルバイト(で実は腐女子)の森下紀子。
そして、あかりをいつも見守り、ときには導く副店長の寺山杜三。
本を心から愛するこのやさしいメガネ男子の副店長に、あかりは心惹かれていきます。
彼女の恋の行方も、この作品の見どころの一つです。

本を愛する書店員たちの成長と恋の物語。ぜひ、あなたも本を探しにこの須王堂書店を訪れてみませんか?

【作品データ】
作品:磯谷友紀)
出版社:講談社
刊行状況:全12巻(完結)