【グルメ漫画特集-03】有名タレントが贈る異色の“肉”漫画『ネイチャージモン』


【あらすじ】
お笑いトリオ「ダチョウ倶楽部」の中で“一番目立たない男”と失礼な公式表記のついたメンバー・寺門ジモン。だが彼にはテレビに映らない別の顔があった。それは異様なまでに「肉」と「クワガタ捕り」に情熱を燃やす男――人呼んで“ネイチャージモン”。この漫画はネイチャージモンが講談社の新人編集者・コマツを引き連れ、野山で大自然の感動を、そして街で肉のうまさを徹底的に体験させる“99%実話”のドキュメンタリーである……。

【みどころ】
無数にあるグルメ漫画の中で相当な異色作と言って良いであろう『ネイチャージモン』。あのダチョウ倶楽部の寺門ジモン氏が原作者を務め、ユニークな作風から“ハモリスト”と呼ばれる固定ファンをもつベテラン・刃森尊氏が作画を担当している。

作品の構成は「肉!ときどきクワガタ」といったバランス配分。自然の偉大さも本物の肉のうまさも知らない編集者コマツを、ネイチャージモンが連れ回して“感動”を半ば押し付け気味に布教するという、なかなか暑苦しい作風である。フィクションだから暑苦しさも誇張されているのかと思いきや、実在のネイチャー(寺門)ジモン氏も相当にアレだ。詳しくは本人の公式ブログ「スピリチュアル・ネイチャージモン」をご覧になり、軽くドン引いていただきたい。

さてグルメ漫画として本作の魅力をお伝えしよう。登場する店は実在のもので、店名とメニュー名で画像検索をかければ漫画と同じ写真が出てきて驚くこと請け合い。高いレベルで名店の料理を再現した作品なのだ。ネイチャージモンとコマツが店を訪れ、開店を待ち、入店して前菜からメイン、デザートまでを堪能。最大限に満足したところで各エピソードは終わる。時には前・中・後編と月刊連載の三ヶ月分ものページ数を費やして、“材料と調理法に究極までこだわった肉のうまさ”が徹底的に語り尽くされる。

珍しいのは通常のグルメドキュメンタリー漫画ではほとんどカットされる“開店までの待ち時間”が詳細に描かれている点。たとえば開店より2時間も早く到着し、「オヤジさんに旨い肉を出してくれるよう、背中からオーラを発しろ!」などと真顔でコマツに語るネイチャージモンのぶっ飛び方が尋常じゃない。食事中もネイチャージモンのトークは止まらず、肉の素晴らしさ、店長のこだわり、そして良い肉を最高に旨く食べるための作法などを徹底的にコマツに叩き込んでいる。当初こそウザそうにそれを聞いているコマツだが、いざ肉を口にすると「うま~い!」と顔が緩み、気がつけばネイチャージモンと同じテンションになっているところが楽しい。

もちろん肉料理そのものの描写もすばらしく、漫画界でトップクラスにランクインすると思われる。焼き肉、ホルモン、分厚いステーキ、メンチカツまで……モノクロのページから色付きの肉イメージが、そして味や匂いまで伝わってきそうなほど丁寧に、大胆に(1キロありそうなリブロースステーキをほぼ原寸大で描いたことも)表現している。

ネイチャージモンの特異なキャラクター性、コマツとの掛け合いコメディ、そこに“旨い肉”の波状攻撃が重なり、読み応えは充分すぎるほど。肉好きな人ならヨダレが止まらないこと確実な、極上の「飯テロ」作品である。

【作品情報】
・原作:寺門ジモン 作画:刃森尊
・出版社:講談社
・刊行状況:全9巻(完結)