【あらすじ】
時は2015年。人類の半数が15年前に滅んでしまったが、ようやく奇跡的な復興を遂げ、一般的な暮らしができるようになった頃、「使徒」と呼ばれる正体不明の怪物が街を襲い始めた。それらを食い止められるのは国連軍ではなく、14歳の選ばれた少年少女たちだった……。「エヴァンゲリオン」という謎の人型決戦兵器に搭乗し、使徒と戦う少年、碇シンジ。人類を救うという、特務機関ネルフの総司令である父親との確執とも戦いながら、嫌々エヴァに乗る。他人との接触をできるだけ控えるように──。しかし、同じエヴァ搭乗者のレイやアスカと出会い、少年は戦いを通して変化していくのだった。
【みどころ】
20年かけてようやくコミックスが完結した『新世紀エヴァンゲリオン』は、社会現象を巻き起こしたアニメーション作品だ。内容の詳細は知らなくとも、「エヴァ」と聞けば「ああ、あれね」と誰もが頷くほど、国内でも世界でもヒットした。しかし、アニメでは新劇場版がいまだ公開され続け、完結はしていない。
このコミックスでの完結は、テレビ版から旧劇場版『Air/まごころを、君に』での理不尽な完結を、少しはスッキリさせるのに役立つと思われる。アニメより細やかにシンジの心模様が描かれており、ミサトやアスカの心情もよく描写されている。アニメでは描かれなかった台詞やシーンなどもあり、旧劇場版でリツコがゲンドウに言った言葉もきちんと書かれているので注目だ。
14歳の少年少女にしか操れない、謎の人型決戦兵器エヴァンゲリオンに、大人たちはすべてを託すしかなかった。そんな大人たちの葛藤も描かれ、アニメとはまたひと味違った味付けとなっている。ネルフとゼーレの関係や、「人類補完計画」の謎も明らかになる。
ラストでは、旧劇場版と同様にネルフが国連軍に攻めこまれ、皆がLCL化してゆく。シンジがそう願ったから──。しかし、最後にレイはシンジに問う。シンジは答える。そして母親である、ユイのことを思い出す。ユイとゲンドウの邂逅──そして……。20年かけてシンジが選び取った答えが、ここにはある。
特筆すべきは、最終話の最後に掲載される「EXTRA STAGE」の章。これは新劇場版への伏線なのだろうか?まだまだアニメ、『新世紀エヴァンゲリオン』から目が離せない!!「次は新作でお会いしましょう」という、貞本氏の言葉も気になるところだ。
【作品データ】
・作者:漫画/貞本義行 原作/GAINAX・カラー
・出版社:角川書店
・刊行状況:全14巻