【あらすじ】
多くの感情が欠けている少年、生江桜歌(なまえ・おうか)は、どんなことがあっても表情を変えない。そんな桜歌が唯一感情を得る方法は、自分の大切な人を殺すことだった──!?魔法使いである拝島先(はいじま・さき)と共同生活を送る桜歌だったが、血文字で書かれたノートを大事に持っていた。そこには「大切な人をつくってください」と書かれている。それは誰が誰に向けて書いたものなのか?そして桜歌は守屋律(もりや・りつ)に出会う。彼との出会いが桜歌を蝕んでいき、高憧ショウ(たかはた・しょう)が桜歌の友達に立候補するハメになるが──?!
【みどころ】
感情をほとんど持たない桜歌の過去が見え隠れしながら物語は進んでいく。母親には疎まれ、愛する父親を殺した時に得た感情は、「笑顔」だった桜歌。「本当の自分」を失っている無感情な状態の桜歌と、大切な人を殺した時の笑顔の桜歌のギャップがミステリアスだ。笑うと案外かわいい桜歌なのに、その笑顔は誰か大切な人を作って、殺さなければ手に入らないジレンマ。
桜歌は先から「最強の魔法使いの力を継承する」代わりに、「世界を滅亡させる」という約束をしていた。魔法使いの力を使ってまで感情のある生活を送りたいと願う桜歌と、何かを企んでいる様子の先の関係が微妙で危なっかしい。
律と桜歌の出会いの前に、桜歌と一人の少女との出会いが描かれているが、それは物語の布石。律と出会い、彼を大切に思ってしまったところから、桜歌の本当の物語は始まる。そしてヒーローに憧れるショウとの邂逅。ショウは律に出会い、裏切り者の魔法使いである彼を「ヒーロー」と呼んでいた。律の死を無駄にしたくないショウは、無謀な賭けに出る。
先の親友かつライバルのレオの登場や、桜歌とショウの関係の変化には注目したい。そして最後に桜歌とショウが迎える衝撃の結末とは──?!最後まで目が離せない、感情のない魔法使いの弟子が、感情を手に入れるまでの物語……。
【作品データ】
・作者:金井千咲貴
・出版社:スクウェア・エニックス
・刊行状況:全3巻