マンガ大賞2011ノミネート『さよならもいわずに』レビュー

さよならもいわずに (ビームコミックス)

■あらすじ
作者、上野顕太郎の妻(漫画内の呼称はキホ)が突然の死去。死亡前後の細々とした出来事に加え、出会い、闘病記、葬儀後の出来事などが、作者の思いを含めて描かれた作品。

■みどころ
上野顕太郎と言えば、一種独特なギャグ漫画が有名。ウエケンワールドに魅了されているファンも多い。その上野顕太郎が新たなウエケンワールドを、そして唯一無二のドキュメント漫画を完成させた。エンターブレイン社のコミックビームで連載されていた『さよならもいわずに』だ。

配偶者を失うことは、誰にでも重大な出来事だが、急死ともなれば落差の大きさは心理的にも実生活にも相当のものだろう。それが題名の『さよならもいわずに』と、漫画のストーリーに色濃く浮き出ている。
私が心に残ったのは、作者が妻の欠片と表現して、妻の写っている写真などの記録を集める場面。『ああ、そう言うことをするんだな』と同時に『自分もそんなことをするかもしれないな』と思わされた。果たして作者は欠片の収集に区切りをつけたのだろうか。

配偶者の死をこれほどまでに正面から扱った漫画は、これまでに無かったはず。これを書いた作者と共に、誌上に載せた編集部にも敬意を払いたい。ただ上野顕太郎作品を読んでいない人が、マンガ大賞ノミネートをきっかけに『さよならもいわずに』を手にしたとしたらどうだろうか。上野顕太郎は、やはりギャグ漫画が本道。どんなに傑作であっても、この一作はイレギュラーとした方が良いだろう。ギャグ作品を読み、『さよならもいわずに』を手にする。そして再びギャグ作品に戻るのが良さそうだ。

ここまで人気化すると、西原理恵子の『毎日かあさん』のように、『さよならもいわずに』も映像化される可能性がある。既にどこかでもう動いているのではないかとも思うが、安易に映像化されて欲しくないなぁと。また味をしめてと言っては表現が良くないが、二匹目のドジョウを狙った作品も出そうだ。しかし同作を越えるのは難しいのではないだろうか。スモールコピーであれば不要だ。

■受賞予測
作品の出来は出色のものだが、エンターテイメントとしてはどうか。玄人好みの作品なだけにノミネートしたと思われるけれども、1年を代表する最高の作品にはなり辛いと思う。中ほどの順位に留まるのではないだろうか。

■作品情報
作者: 上野顕太郎
出版社: エンターブレイン
掲載誌: コミックビーム
既刊数: 全1巻

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