愛のカタチは1つじゃない。そして法律も!?ハレ婚が描く一夫多妻の世界観

「早く結婚した方がいい」「(子供を)産めないのか」。テレビニュースで何度も耳にした、国会のセクハラやじの一幕である。情報を受けた側は「またか」と残念ながら、そういった議員達の発言にすっかり耐性がついてしまった。そんな女性卑下の発言耳にする機会がある一方で、男性諸君なら1度は「一夫多妻制」に憧れたことがある方も多いのではないか。

今回紹介する『ハレ婚』は、1人の男性と3人の女性の”ありえない”結婚生活が描かれている。作者のNONは、デリヘル嬢と女子大生のダブル生活の葛藤を綴った『デリバリーシンデレラ』で注目を浴びる。扱うテーマの問題もあり作品の賛否が分れたが、今作でも挑戦的な姿勢を崩さない。

主人公の前園小春は、付き合う相手が既婚者ばかりという恋愛運最悪の22歳。3度目の失恋で、帰郷を決意する。久しぶりに帰った故郷では、少子高齢化の過疎対策として「一夫多妻制の特別指定地域に選出される」という特別な法案が成立していた。

小春の実家で経営する喫茶店は、父が病気で倒れたこともあり、借金で火の車状態。自身の力ではどうすることができない状況に追い込まれていた小春の前に、「僕の3人目の妻になれば1000万円あげる」という、伊達龍之介が現れる。龍之介は、3000万円まで膨れ上がった小春家の借金を返すために、あっさり自宅まで売却する。こうして小春、龍之介、あと2人の妻である柚子、まどかの4人の奇妙な結婚生活はスタートする。

実際に一夫多妻制の国の出身者の話では、制度による問題が起こることは頻繁ではないという。当然のことながら、懸念される女性の心境までは知る由はないのだが……。「一夫多妻制度を日本に導入すればどうなるか?」。議員が安易な発言をしてしまうような、わが国の現状のモラルでは夢物語であろうが、そんな妄想に浸ってしまう。

【作品データ】
作者:NON
出版社:講談社
刊行状況:1巻(続刊)